ロジャーズ看護理論

ナイチンゲールによれば、患者とはみずから回復していく過程にある者でした。その回復過程で患者がどのような欲求(ニード)をもっており、どのニードを充足を看護師が助けるべきかを見きわめようというのが、ヘンダーソンの理論でした。人間は基本的に自分で自分のことをしており、患者が今できなくてもいつかできるように看護が支えるべきだという考えをロイは「セルフ・ケア」の考えでまとめました。
生物の生理的な恒常性維持のしくみのことを「ホメオスタシス」といいます。さらに、一般に、ずれが生じるとそれを打ち消すように自ら働きかけて自分の恒常性を維持するシステムのことを「サイバネティクス」といいます。ロイは人間は動物としては(つまり生理学的には)ホメオスタシス、人間としては自己のイメージ、役割、相互の関係で自分を維持していくサイバネティクスな仕組みをもった存在だとしました。
こうして看護理論は一貫して、ナイチンゲールの自分でみずから回復していく患者というイメージを理論へとひろげていきました。しかし、ホメオスタシスやサイバネティクスでは自分の恒常性を維持できても、生まれ成長し老化しやがて死んでいく、そうした人間のありようはうまくつかむことができません。
ロジャーズがつかもうとしたのは、外からさまざまなものを取り込みながらも自分を維持しつつ、まさに成長・発展し老化し死ぬ人間のあり方でした。そうした発展成長していくありようを彼女は「ホメオダイナミクス」と名づけました。
自然界では秩序あるものはしだいに無秩序なものへとほどけていきます。この無秩序さを「エントロピー」と言い、この傾向を「エントロピー増大の法則」といいます。生物はこの法則の反して自己の秩序を維持していく、いわば「負のエントロピー」を特徴としています。しかも外からさまざまなものを取り込みそして内から外へとはき出している、外に向かって開かれたシステム(開放系)です。生物はこうした負のエントロピーの開放系であるばかりか、発展・成長・老化という変化を遂げていきます。ロジャーズはこうした負のエントロピーの成長する開放系としての生物としての人間を把握し、看護学の基礎のすえようとしたのでした。(ただそのあまりの先駆性ゆえの難解さをかかえこんでしまったことは確かです)。

参考文献:勝又正直 著『はじめての看護理論』医学書院
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by takumi429 | 2009-01-06 15:52 | 看護理論 | Comments(0)
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