ベナー看護理論1

コンピューターに人間と同じ事をさせる研究が盛んです。人間と同じ事ができるコンピューターを人工知能といいます。スタンフォード大学のフェイゲンバウムという学者は血液感染症と骨髄炎の診断をするコンピューターを開発しました。その的中率はスタンフォード大学の人間の医者と同じくらいの精度になったそうです。そこで彼らはこのコンピューター(のソフト)を、人間の達人(エキスパート)に負けないレベルだということで、「エキスパート・システム」と呼びました。
これを猛然と批判したのが、反人工知能論者のヒューバート・デレイファスという学者です。彼は弟のスティアートと共に、人間が達人になっていく「技能生得の5段階モデル」というものを提唱し、コンピューターはその段階のせいぜい第2段階ぐらいしか到達しないのだとしました。この5段階とは①初心者(規則のあてはめるだけ)、②上達した初心者(状況をよみとるようになる)、③上級者(目標に合わせて臨機応変に対応)、④熟練者(過去の体験記憶によって状況をまとまりとしてとらえる、⑤エキスパート(技能は身体の一部となって意識されない)です。
ドレイファスらは主に飛行機の操縦とチェスをモデルにこの段階を考えました(残念ながらチェスでは人間が人工知能に負けてしまいました)。彼はより一般的で実践的な人間の活動でもこの段階があてはまるかどうか知りたく思い、この段階説が看護の世界でもあてはまるかどうか、看護研究者に依頼しました。その結果生まれたのが、『ベナー看護論』(邦訳)です。
ベナーは看護師もこの5段階をへてエキスパートになるといいます。すなわち、①状況と関係なくバイタルサインなどのデーターだけに単純に反応してしまう初心者、②繰り返し起こる意味のある状況にきづく、上達した初心者、③看護計画にもとづき看護できる上級者、④状況を全体的にとらえられる熟練者、⑤状況を直感的に把握できるエキスパート、です。こうして看護学は現代科学論争の最前線に貢献する業績をもつことになったのです。

参考文献:勝又正直 著『はじめての看護理論』医学書院
by takumi429 | 2009-01-06 16:55 | 看護理論 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://shakaigaku.exblog.jp/tb/15724441
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
名前 :
URL :
※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。
削除用パスワード 
<< 参考 ドストエフスキーの全小説 ベナー看護理論2 >>