14.『時をかける少女』

『時をかける少女』 2006年
監督:細田守
原作:筒井康隆
脚本:奥寺佐渡子
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原作は短編。
アニメ作品はほとんどオリジナルな作品。
物語はほぼべつもの。
しかし設定(タイム・リープする女子高生、二人の男友達)は共通。
つまり物語世界を共有した、物語のべつのバージョン(変種)といえる。
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原作では少女(和子)は、時間跳躍と空間移動をする能力を、理科実験室でたまたま嗅いだ薬のよって得た。
二重存在の矛盾(過去に移動したらなもう一人の自分がいるはず)は解決されていたとされている(角川文庫77頁)(どう解決したかは述べてない)。
それに対して、アニメではこの二重存在の矛盾は問題になっていない。なぜなら、ここでのタイム・リープは、過去のある時点まで、時間の系をさかのぼり、そこからべつの時間の流れをつくる、つまり、別の時間の流れ(系)をつなげることがタイム・リープだから。
これはいわば、映画のフィルムをさかのぼって、その時点でフィルムを切って、つまり別のフィルムをつなげるという、映画(アニメ)の編集作業と同じ、時間のとらえ方なのだ。
時間はそこで二またになる。三叉路の標識の場所に何度も戻るのはこのパラレルな可能な時間系を示している。
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主人公真琴がバージョン2であるなら、主人公のおば(和子)がじつはバージョン1であることがわかる。
おばが高校時代の話をしているときに出てくる写真には、男子2人のはさまれた女子1人であるおばが写っている。筒井康隆の原作主人公の名前は「和子」である。つまり、原作の主人公は、おば和子であり、このアニメはそのめい真琴によるバージョン2なのである。

技術的には、イフェクトをつかって影をつけていないにもかかわらず、奥行きがあるように見えるのは、アニメーターの技術が高いから。とくにキャッチボールをするときの体の動きはみごと。
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繰り返されるモチーフ
キャッチボール:男女を意識する直前の少年・少女の心の通い合い。つみのない三角関係。
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三叉路のシーン:ある時点から、可能な時間がいくつも分岐していることをしめす。(映画的な時間系)。
土手のシーン:右から左へと人が移動。時間の流れ(時間直線)。
いったん時間直線を左(未来)に消えた千昭が、泣く真琴の元に戻ってきて「未来で待ってる」とささやき、真琴が「すぐ行く、走っていく」と答える。未来から過去につかの間やってきて真琴と恋をして去っていく千昭がこのワンシーンで集約されている。
平行関係:おば和子とめい真琴。おば和子が別れた相手とは会えないように、真琴も千昭とは二度と会えないだろう。しかし、千昭が見たかった絵(和子が修復)を、真琴は、千昭のいる未来へととどけるであろう。未来にもどった千昭が絵を探し行くと、その絵は存在し、その絵が真琴の努力によって消失を免れたことを知ることになるだろう。(ちなみに、真琴がおば和子を訪問した時に、絵が修復中であることの張り紙がある博物館のなかを、実は千昭のと思われる人物があるいているのが、後ろ姿が出てくる)。

なんといっても見事な脚本(オリジナル作品といっていい)。
脚本はきわめて自然な高校生の会話をとらえている(ようにおじさんには聞こえる)。
声優も登場人物の設定年歳とあまり年齢の変わらない仲里依紗、石田卓也らの起用が成功している。
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by takumi429 | 2012-01-14 01:30 | アニメ論 | Comments(3)
Commented at 2012-01-17 00:48 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by takumi429 at 2012-01-26 03:05
http://shakaigaku.exblog.jp/15724437/ をご覧ください。
Commented by takumi429 at 2012-01-26 03:11
あるいは、『はじめての看護理論』を図書館で借りて、ロイ理論の部分をごらんください。
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