論文の鉄則 (戸田山和久『新版 論文の教室』(NHKブックス1194)より)
鉄則1:自分を高めるたの手段として論文書きを位置づけよう。 鉄則2:辞書に投資を惜しんではならない。 鉄則3:剽窃(ひょうせつ)は自分を高めるチャンスを自ら放棄する愚かな行為だ。誇り高く生きたいなら、決して行ってはならない。 鉄則4:論文は説得のための文章だが、青年の主張でも愛の告白でもない。ホットなハートは陰に隠して、クールな頭脳で論理的説得を目指そう。 鉄則5:論文には次の3つの柱がある。 (1)与えられた問い、あるいは自分で立てた問いに対して、 (2)1つの明確な答えを主張し、 (3)その主張を論理的に裏付けるための事実的・理論的な根拠を提示して主張を論証する。 鉄則6:「曖昧さ」と「はぐらかし」は厳禁。 鉄則7:「問い+答え+論拠」以外のことを書いてはいけない。 鉄則8:結論の正しさにこだわるな。重要なのは論証の説得力だ。 鉄則9:論文とは自分の考えを普遍化された形で書いたもののことだ。 鉄則10:論文は第三者にチェック可能なものでなければならない。 鉄則11:「自由に書け」を文字通り受け取るヤツはアホである。 鉄則12:論文を書くときは、ちょっと格好悪いがダンドリくん路線行こう。 ダンドリその1:課題の主旨をよく理解しよう ダンドリその2:テーマの見取り図になるような資料を探して読む 鉄則13:問題意識をもつにはどうしたらいいかを考えるより、問題意識を捏造(ねつぞう)する方法を考えよう。 ダンドリその3:問題をデッチあげるために基礎資料をもう一度読む 要チェック箇所: (ⅰ)(メウロコ)なるほどそうだったのか!と「目から鱗(うろこ)」の箇所 (ⅱ)(ハゲドウ)そうだそうだ、わしもかねがねそう思っとんよ、という「激しく同意」の箇所 (ⅲ)(ナツイカ)ん?なんだか変だな。そうしてそういえるわけ?という「納得いかない」箇所 (ⅳ)(ハゲパツ)なんじゃこれは、わしゃ絶対認めんけんね!という「激しく反発」の箇所。 ダンドリその4:問いをきちんと定式化してみる 鉄則14:卒論の出来は問題を絞ることができたかで99%決まる。 ダンドリその5:問題を取り組むための調査を進める 鉄則15:論文とは論文の形をした文章のことなのである。 鉄則16:型を身につけるにはまず真似するのが一番。 論文の構成要素: (0)タイトル・著者名・著者の所属機関 (1)アブストラクト(要約) (2)本体(①問題提起、②主張、③論証) (3)まとめ (4)注、引用・参考文献一覧 鉄則17:論文のタイトルには「この論文を読むと読者が何がわかるようになるのか」を書く。 鉄則18:要約は文章を一様に短くすることではない。読んで報告する報告型の課題に取り組むとき、 (1)著者はどういう問題を立てているか (2)著者はそれにどう答えているか (3)著者は自分の答えのためにどのような論証をしているか の3点だけおさえて報告すればよい。 鉄則19:型を守ることは保守的なこととは限らない。型を守ることによってはじめて可能になる創造的な活動もある。論文書きとはそういう活動だ。 鉄則20:アウトライン(論文の骨格、論文の内容と構成を、短く箇条書きに、最初は目次のように項目で、のちには短い文で、書き表わしたもの)が太ったものが論文だ。アウトラインから出来上がった論文は構成がしっかりしたものになる。論文を書くときにはまずアウトラインを作ろう。 鉄則21:アウトラインは成長し変化する。アウトラインはつねに暫定的なものと考えよう。 鉄則22:調べて報告する型の課題の場合、調べた結果わかったことを書くのではない。何を報告すればよいのかを先に考えて、そこにポイントを絞って調査する。 ①アウトラインは論文の種である。 ②アウトラインは論文書きの燃料でもある。 ③アウトランは目次やアブストラクトの原型としても使える。 鉄則23:問いと答えのフィールド(相互に関連しあったたくさんの問いと答え)のポイントは、どれだけたくさんの論点を発見できるかということだ。論文で扱うかどうかは忘れて、とにかくひらめきと連想の広がりを楽しもう。 鉄則24:フィールドからアウトラインにまでもっていくためには、捨てることが必要だ。もったいないけど、おもいきってばさばさ捨てる。 鉄則25:カテゴリー・ミステイクを避けるためには、1つの階層が同じカテゴリーの項目だけを含むようにする。 鉄則26:論証は根拠と主張がこの順に出てくるとは限らない。「だから」「したがって」「なぜなら」などの語に気をつけて、どれが根拠でどれが主張かを見抜こう。 鉄則27:自分の論証をより説得力のあるものにできるかどうかは、自分で自分にどれだけツッコミを入れることができるかにかかっている。自分の議論が批判されるとしたら、それはどこなのかを見極めて、あらかじめ批判に答えるよう努力しよう。 鉄則28:トピック・センテンス(パラグラフの言いたいことを一文にしたもの)はパラクラフ(論文を作り上げるために最小構成単位、1つのことを言う)の先頭に置くのがパラクラフ・ラインティングの基本である。 鉄則29:キミがせっかく書いた論文を教員だけに読ませるのはもったいない。なるべくたくさんの人によんでもらってコメントをもらおう。 鉄則30:わかりやすく書くばかりが能じゃない。というものの、わかりやすく書くべきときにそれができないのもやはり不幸だ。 鉄則31:ゴースト文を避けるためには以下の3点に注意すべし。 ①主語と述語のそろった文だけ書いていくようにする。 ②1つの文を書くたびに、文頭と文尾が対応しているかどうかチェックする。 ③1つの文にいろいろつめすぎないようにする。 鉄則32:長い文をうまくあやつることは、キミたちにはまだ無理だ。なるべく短い文に分解するのが無難。 鉄則33:キミが書きたかったことがらはキミの書いた文でしか言えないのか?もっとスッキリした文にならないか?いろいろ書き換えて試してみよう。 鉄則34:論文のこまごました「しきたり」はオリジナリティ(だれがそれを独自に主張提示したか)を尊重するためにある。 鉄則35:論文のこまごました作業は本当にウンザリする。ワープロソフトやパソコンの便利な機能を活用してなるべく楽することを考えよう。 鉄則36:記号は出来る限り使わない。
by takumi429
| 2013-03-15 13:05
| 教科書・参考書
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