7.漢字の呪術的世界
NHKスペシャル 中国文明の謎 第2集 (2012年11月11日放送) http://www.nhk.or.jp/special/detail/2012/1111/ http://v.youku.com/v_show/id_XNDc0ODI4NTQ0.html 漢字は殷の時代に占いのために発明された 甲骨文字 卜占 天と王とのコミュニケーションの手段 周の時代になって、行政のためのコミュニケーションの手段となった。 表意文字であるので、異なった言語体系の人々を束ねることが出来る。 白川静:漢字の持つ呪術的(まじないの)世界を解明 呪術的世界と宗教的世界 超感性的諸力(ふだんは目に見えないさまざまな力) アニミズム:物の背後にあってその物を動かしている霊魂(アニマ)を信仰すること プレアニミズム:見えない力(マナ)がさまざまな現象を引き起こしていると考えること ヴェーバーの2類型(呪術と宗教のちがい) 神強制:目に見えない力に働きかけて自分の都合の良いように現実を変えようとすること=呪術 例:丑の刻参り(丑の刻(午前1時から午前3時ごろ)に神社の御神木に憎い相手に見立てた藁人形を毎夜五寸釘で打ち込むことで恨む相手を殺したり危害を与えようとする呪い) 直接、現実に力を行使するのでなく、超感性諸力に働きかけて、その感性的諸力の力で現実を変えようとする。 例:雨乞いの祭り(天に犠牲を捧げて、雨を降らせようとする。犠牲は時には人間のこともある(人身御供)) 神崇拝:人間によって神が動かせることをあきらめ、ひたすらその加護を祈ること=宗教 フレイザー(James Frazer1854-1941)の『金枝篇』(未開社会の神話・呪術・信仰に関する集成的研究書) 共感呪術(sympathetic magic) 未開人の思考を支配している呪術(まじない)の原理 (1)類似の法則:類似は類似を生む、結果はその原因に似る (2)接触の法則/感染の法則:かつてお互いに接触していたものは、空間を隔てて相互作用を継続する 類似の法則による呪術:類感(homoeopathic magic)/模倣呪術(imitative magic) 接触の法則による呪術:感染呪術(contagious magic) 例(1)ある人物をのろい殺そうとする時、その人物に似せた像を突き刺したり燃やして呪いをかける (2)ある人物をのろい殺そうとする時、その人物がかつて接してた物(髪の毛など)を焼いたりして呪いをかける。 人形にその人間の爪や髪の毛を入れて、人形を刺したり焼く、という合わせ技がよく用いられる。 ロマン・ヤコブソンの指摘した フレーザーの「類似」と「接触」/「連続」という呪術の二つの構成原理は、失語症の2つのタイプの見られる「隠喩的」および「換喩的」という表象作用の二つの軸に対応する区別である (「言語の二つの面と失語症の二つのタイプ」ロマーン・ヤコブソン『一般言語学』(みすず書房1973収録)) ヴェーバーの「類感的性的狂躁道」(die homoeopathische sexuelle Orgie) 作物世界と人間世界の類似:作物の豊作と人間の多産 豊作を祈願するために、人間の交合を祝う(多産をもたらすべく乱交する) 映画『十戒』より、金の雄牛をあがめる狂躁道 http://www.youtube.com/watch?v=NEeHS1trNcQ ヴェーバーの考えていた狂躁道とは、このイメージではないかと思われる。 例:小牧の田県神社の豊年祭 この祭りのニュース動画をみてみよう。 「くらやみ祭り」:豊年を祈って放逸な性交をする フレイザー 呪術師としての王 王は天候調整(雨降らし)の呪術師である ヴェーバー 「雨司」(Regemacher,rainmaker)としての中国の君主 これは、卜占をして、羌族の捕虜を殺して犠牲としていた殷の君子によく当てはまる。 認知意味論のメタファー理論 メタファーとはある集合からある集合への写像(mapping)である。 あるいはある集合の内容を別の集合を使って理解する試みである。 メタファー:「恋は旅である」 恋の経験を旅を通じて理解説明する。 人生の道の途中で僕たちは出会ったよね。それからいろんなことがあったね。晴れの日もあれば、雨の日もあった。すいすいと楽しくいけることもあったけど、つらい道もあった。笑ったり泣いたり怒ったりしながら、一緒に旅をしてきた。でもいま分かれ道に来たんだよね。君は右、僕は左。それぞれが目指している方へ別々に行く日が来たんだ。君の旅は素敵なものになることを祈っているよ、ありがとう、そして、さようなら」。 メタファーとは、二つの集合を(似たものとして)写像する(対応させる)ことである。 この写像の考え方は、類感呪術や漢字を考えるのに使えるかもしれない。 穀物の発芽と成長と豊穣な実り、を、男女の交合と出産、の世界に対応させる。 対応した部分を操作することで対応部分の変化を期待する。 類似の原則とは二つの集合の類似対応を意味し、 接触/感染の原則は、写像(対応付け)を意味する。 漢字は現実の事物の中から特徴ある部分を抽出して線画としたもの、つまりmapping地図化(写像したもの)。 漢字が刻まれた甲骨(亀の甲羅や動物の骨)は世界の写し絵となる。 熱した火箸を押しつけることは世界と、文字が刻まれた甲骨、とを対応させる(感染呪術)ことにほかならない。 世界を写し取った甲骨を読み解くことで、世界(天)の意志を読み解こうとする。 またしたことを甲骨に書くことで、天の下でおこなわれたことが、甲骨に写し込まれるわけである。 漢字とは基本的に似せ絵(像map)である。 それに対して表音文字はどのように世界を写し取り構築するのか、 その結果、どのような宗教世界の違いが生まれてくるのか。 そのことはさきの「古代ユダヤ教」で明らかになって来るであろう。
by takumi429
| 2013-05-26 23:41
| ヴェーバー宗教社会学講義
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