『田舎教師』を読む その2

主人公の中田遊郭往還
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想像で書いた 現地調査なし・清三の日記にもそうした事実なし
 しかし口絵にもなる重要なシーン
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 麦倉河岸には涼しそうな茶店があった。 大きな栃(とち)の樹が陰をつくって、 冷めたそうな水にラムネがつけてあった。 かれはラムネに梨を二個ほど手ずから皮をむいて食って、 さて花茣蓙(はなござ)の敷いてある樹の陰の縁台を借りて仰向けに寝た。 昨夜殆ど眠られなかった疲労が出て、頭脳(あたま)がぐらぐらした。 すずしい心地の好(い)い風が川から来て、 青い空が葉の間からチラチラ見える。 それを見ながらかれはいつか寝入った。 (『田舎教師』新潮文庫174頁)

「性欲が溜まっているだろう、遊郭に行ったあとはスッキリしただろう」 「溜まる性欲」とのとらえかた

どうやって書いたのか。
 地図を見ながら書いた。
 すでに『大日本地誌』のために調査したことのある上流の風景を借りてきた。
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書き方 すでに冒頭に見られる
 歩いた経路を地図に書き、そこからどのような風景が見えるか想像する。
 経路を歩くことで、小説の内部の時間と空間が生まれる。
 目的地との関係から主人公の内面がうまれる。
 赤い光に照らされることで主人公の内面(抑えた欲望)が浮かび上がる。

地図の上に経路を描いて人を見下ろすまなざし
 『第二軍従征日記』に添付された地図 参謀本部の直属の陸地測量部の作成した地図

NHK高校講座 日本史『日露戦争』
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日露戦争特別展 http://www.jacar.go.jp/nichiro2/index.html

「一兵卒」日露戦争に従軍し脚気発心で死ぬ主人公
  「彼」=国民の誰でも代入可能 一兵卒の彼に代入されうる者=日本男子(国民)

日露戦争の勝利のわきかえるなか、地方でひっそりと死ぬ青年教師
これが悲劇になりうるのは、「日本国」全体という地図のまなざしのもとに、
この一地方の青年がとらえられているからにほかならない。

日露戦争
 機関銃と要塞が本格的に使われた大消耗の国家総力戦
 人・武器・食料などの補給(兵站)に鉄道が大々的に使用された。
ロシアはシベリア鉄道、日本は山陽鉄道(のちの山陽本線)と広島から広島南部の宇品(うじな)港を結ぶ宇品線を使って、兵隊、物資の輸送を行った。
 もともとシベリア鉄道の支線としての東清鉄道と旅順港の要塞化が引き金。
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 (ウラジオストックは不凍港とはいえ真冬には凍るし、日本海でふさがれている。日本海を逆さにしてみるとそれがよくわかる)。
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 戦争の後半までシベリア鉄道はバイカル湖を湖面が凍る時は湖上に鉄道を敷き、溶ける夏は船で、物資を運んでおり、しかも単線だったために輸送力が低かった。
 しかし、バイカル湖を迂回する路線が開通することで満州の戦地への補給能力が飛躍的に高まった。
開戦前からこのシベリア鉄道開通まえに勝利しなくてはいけないと日本側はかんがえていた。
 日本もロシアも満州・朝鮮の地図作成に戦争前から努力した。
 日本はたまたま死んだロシア人将校のもっていた地図を利用して戦争を行うことができた。(横手慎二著『日露戦争史 20世紀最初の大国間戦争』中公新書)

この鉄道について花袋はべつに小説「少女病」を書いている。つぎはそれを読むことにしよう。
近代と鉄道の問題を考えてみることにしよう。

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by takumi429 | 2014-06-08 18:39 | 社会環境論 | Comments(0)
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