5.電話
1876年 アレキサンダー・グラハム・ベル 電話を発明 アレキサンダー・グラハム・ベルは、1875年にこの電話機をつくった。この電話機の仕組みは、導線をまいたコイルでできた電磁石の前に金属製の振動板をとりつけて、音声がその振動板にあたるようになっていた。そして、その振動に応じて導線の電流を変化させるのである。この電流が受信機にながれ、受信機の電磁石に電流の変化をおこして、振動板を振動させて元の音声を再生するものだった。 先行研究 1854年 フランスの発明家シャルル・ブルサールは、に音声によって振動する板を利用して、電気的に通話する方法を提案。 1855年 1861年 ドイツ人物理学者ヨハン・フィリップ・ライスがブルサールの提案を実験し、フランクフルトの物理学界で報告。 1860年 フィリップ・ライス 「テレフォン」:振動膜によって電流を断続させて離れた地点まで送信する装置 電信(文字や符号、あるいは写真などを電気的な符号に変えて隔たった場所で再現する通信) 1837年 アメリカの発明家モース、電信用電気装置を発明。 電話が発明された1876年当時、電信は8500カ所の電信局と21万マイルの電信線がアメリカ全土をおおっていた。 電話は電信のイメージに規定されていた 想定された使用法:ビジネス用の通信 当初の従業員:もと電信の従業員 新しいメディアは古いメディアの内容を引き継ぐことからその歴史を始める 有線放送としての電話 有線ラジオ的な娯楽メディア 1881年 パリ国際電気博覧会 オペラ座・テアトル・フランセの公演中継 1890年 パリの電話会社 市内劇場の公演の実況中継を始める 1896年 イギリスの電話会社 ロンドンの劇場娯楽の電話による送信を始める 1893年 ハンガリーのテレフォン・ヒルモンド 電話を使って方法を開始。以後20年以上にわたって6000世帯の加入者に放送を送った。 女性交換手の登場 男性交換手(多くはもと電信従業員)の怠惰と粗暴 女性交換手に切り替えられていった。 男性が求める女性像に電話交換手は一致したという分析がある。 利用者が利用法を発明 ビジネス中心の用件伝達メディアと開発者たちはみなしていた。 都市中心、男性中心の拡張戦略 実際には地方にひろがった。 女性によるおしゃべりと社交に用いられるようになった。 電話は一日的な公的なメディアから双方向的な私的なメディアへと変化した。 そうした利用の仕方を発見したのはむしろ利用者だった。 日本でも昔は電話が玄関口にあった。それが次第に居間へ、さらに個々の部屋に、さらに携帯へと入り込んできた。 なぜそうした転換が生まれたのか。 聞くことと見ること 聴覚と視覚 聴覚のもつ空間性 包み込むような一体感 母語の担い手である女性が電話でもとめられたのではないか。 電話が作り上げる世界 安岡章太郎『ガラスの靴』(1951年) 村上春樹『若い読者のため短編小説案内』(1997年)の分析 (1)「ぼく」は現実を離れた悦子に惹かれ、彼女を追いかけている。追いかけないわけにはいかない。 (2)しかし「ぼく」が悦子に追いついてしまえば、「ぼく」は彼女を現実化してしまうことになる。現実化された悦子は「ぼく」の求める悦子ではない。 (3)しかし「ぼく」がひとたび悦子を追いかけることをやめたら、今度は現実が単純に「ぼく」に追いついてしまう。(106頁) 電話は現実とは異なるもう一つの世界へ通り道(メディア)として描かれている。 電話は目に見える世界とは異なる、声の親密な世界を作り上げている。そこではいわゆる有意義な情報の伝達は必要ない。 電話機はそうした親密な世界の入り口である。いったんそうした世界が作り上げられたならその世界の回路の上に、文字(メール)や写真(写メール)も伝達流布することができる。
by takumi429
| 2007-05-02 22:09
| メディア社会学
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