映画に対する10のアプローチ
1.テクノロジーの歴史 2.技法についての研究 3.著名人についての研究 4.映画と他の芸術との関係についての研究 5.名画の編年史 6.社会と関わりでの映画 7.ハリウッド映画会社の歴史 8.映画監督の研究 9.ジャンルについての研究 10.検閲や規制の研究 まず2について見てみよう。 ・演出技法(mise-en-scneミザンセーヌ) (もともとは「舞台に乗せること、演出すること」) カメラの前に現れるもの(セットデザイン・照明・登場人物の動き) ・撮影技法(撮影すること、フィルムに収めること) カメラの位置 カメラ動き ショットスケール(ショットの枠が切り取る空間の大きさ) 一つのショットの長さ 編集のペース (ふつうは、演出技法、撮影技法、に編集を加えた3要素をあげる。バクランドのこの本は編集を撮影技法の中に含めているようだ)。 セットデザイン 美術監督とは映画作品のセットや舞台装置をデザインしたり選ぶ人 美術監督から監督になったリドリー・スコットの「ブレードランナー」(1982) CG(コンピューター・グラフィック)なしでこの統一的近未来の世界を創出。 演出技法と撮影技法を細かくみていくより、それをまとめるのに、大きく分けて2つの方向がある。それが、長まわしとコンティニュイティ編集の2つの方向である。 ショット/シーン/シークエンス ショット:ある被写体を切れ目なく映し出すもの シーン:一定の場所・一定の時間のなかで展開する出来事を示すショット群をまとめたもの シークエンス:関連する出来事にまつわる複数のシーンをまとめたもの シーンの表現法 ・長回しの使用 ・ディープフォーカスの使用 ・コンティニュイティ編集の使用 長まわしとは 1つのショットの長時間にわたること 1940年代のハリウッド映画の1ショットの平均は9秒 (これより長いと「長回し」と感じられた) ディープフォーカスとは (前景・中景・背景といった)ショットの複数の面に同時に焦点を合わせて、複数のアクションが同時にフィルムに収められるようにすること 長回しとディープフォーカスは組み合わされる。 その典型がオーソン・ウエルズの作品『偉大なるアンバーソン家の人々』(1942) 演出技法から撮影技法への翻訳は最小限 例示:映画の夜会の長まわしのシーン コンティニュイティ編集 複数のショット(時間と空間の断片)を統合して時間と空間の統一性を作り出すこと ルネッサンス絵画や19世紀演劇空間を映画の中で模倣しようとする一連の技法 観客が目に見えない第4の壁の位置に身を置くようにする。→180度の原則 連続性を確保するための技法 ・アイライン・マッチ 登場人物がスクリーンの外の何かを見ると、切り返しがあって登場人物の見ているものが示される ・視点に沿った切り替え 登場人物が何か見ている 登場人物の視点からそのものが示される。 ・アクションに沿った切り替え アクションがなされるに合わせてショットから別のショットへの切り替えが起こる。 階段を降りる主人公→階段を降りてくる主人公 店先につっこむ車→車がつっこんでくる店の内部 ・方向を合わせた連続性 ものの進む方向が一定している。 右から左に進んでいく主人公→さらに右から左に進んでいく主人公 観客に同じ方向から見ている気にさせる。 コンティニュイティ編集の利点 ショットの変化によって暗示される視点の変化を通して、監督が観客をアクションの内部へと完全に巻き込める。 例:ヒッチコック『汚名』のラストシーン 日本映画で長まわしを駆使した例として 溝口健二『雨月物語』の各シーン 溝口健二『新平家物語』の冒頭のシーン:クレーンショットから連続してドーリー・ショットへ? 日本映画で編集を駆使した例として 小津安二郎『晩春』 冒頭の茶会のシーン:ゆったりとしてみえるシーンがじつは細かなカットを組み合わせて作られている。じつ小津映画は西部劇なみにカット数が多い(蓮見重彦の指摘)。 階段を上り降りするシーン:2つのカットが一息でつながって見える編集のたくみさ。 見事な編集能力を駆使して、時には方向を合わせた連続性などのコンティニュイティ編集の技法を時には踏み越えたりする。
by takumi429
| 2008-04-19 12:50
| フィルム・スタディーズ入門
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