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フィルム・スタディーズ入門 3 映画美学(2)

さまざまな映画の音響
音の発信源(音源)がどこに位置するかで区分する。
非ーディエジェーシス上の音響:物語世界の外からの音。サウンドトラックなど
ディエジェーシス上の音響:ストーリー世界の中にある発信源からの音響
 ・外的なディエジェーシス上の音響:登場人物の声など
 ・内的なディエジェーシス上の音響:登場人物の心の声
ディエジェージンス(diegesis):映画作品のストーリー世界(物語世界)

映画美学の2つの立場
(1)フォーマリスト
ルドルフ・マンハイム
セルゲイ・エイゼンシュタイン
映画は現実を完全には模倣できない。その映画のもつ制約こそ、芸術的な目的のために私たちの日々の現実経験を操作し変形するきっかけを映画制作者にあたえる。
(2)リアリスト
アンドレ・バザン、ジークフリート・クラカウアー
現実を模倣する映画の能力が映画を芸術として規定すると主張
長回しとディープフォーカスこそが映画固有の特性を表現する映画のスタイル

フォーマリストにとっての映画
映画が現実を模倣するのを妨げている特性を映画監督が逆手に取り、独自なものの見方を表現できるがゆえに1つの芸術である。

映画固有の技法
モンタージュ
コマおとしとスローモーション
ローアングル・ハイアングル
三次元の二次元平面への変換
         ↓
通常の視覚経験の模倣ではなく、映画制作者が映画的な世界の見え方を示すことができる。

モンタージュ
モンタージュとは「組み立てる」を意味するフランス語のmonterに由来し、一般に映画のショットとショットをつなぐ「編集」をさす技術的な用語。
 もともとは「編集」の意味だったが、それが映画の連続性(コンティニュイティ)ために使われるのでなく、カットとカットを組み合わせてそれまでにはなかった意味や世界を作り上げるようになったものをさすようになった。

レフ・クレショフの「観念的地理」
1920年、クレショフによって実現された実験
5つのカットを組み合わせる
1 1人の青年、左から右に行く。
2 1人の乙女、右から左に行く。
3 2人が出会って、手を握り合う。青年は手で空間の一点を指示する。
4 広い階段を持った白亜の大きな建物が見える。
5 2人の人物が階段をのぼっていく。
  最初の三つのカットはそれぞれ異なったロシアの街上で撮られたもの
  四番目のカットはアメリカの大統領官邸であった。
  しかし観客は、その場面をひとつの全体として知覚した。

クレショフ効果
俳優のクローズアップ→机の上のスープ皿のカット
俳優のクローズアップ→長いすの上の死んだ女のショット
俳優のクローズアップ→小さな熊の姿をしたおかしな玩具を弄ぶ小娘のカット
俳優はまったく無表情で同じカットをつかったにもかかわらず、観客はその顔に、食欲、悲しみ、微笑を勝手に読み込んだ。



コンティニュイティ編集→一貫した舞台空間
モンタージュ→象徴的な意味

エイゼンシュタイン
部分部分のカットからより大きな連想(象徴的な意味)を作り出そうとする。
『戦艦ポチョムキン』(1925年)
 「オデッサの階段」シーンの後の、戦艦の発砲とライオンの石像の3ショットのモンタージュ

フォーマリスト:モダニズムの枠組み(メディアに内在する構造への関心)の内部で議論
リアリスト:芸術の機能とは自然を模倣することにある

2つの映画美学
映画は長回しで統一された編集が入っていない空間、あるいはモンタージュで構築された統合的空間を用いながら、制作することができる。
by takumi429 | 2008-05-01 21:19 | フィルム・スタディーズ入門
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