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11.ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体』

11.ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体』

冷戦終焉は、ナショナリズムの再勃興 がおきている。
このナショナリズムに関して今や古典となっているのが今回みるアンダーソンの研究である。

「わたしの理論的出発点は、ナショナリティ、あるいはこの言葉が多義的であることからすれば、国民を構成することと言ってもよいが、それがナショナリズム[国民主義]と共に、特殊な文化的人造物であるということである。・・・ナショナリティ、ナショナリズムといった人造物は、個々別々の歴史的諸力が複雑に「交叉」するなかで、十八世紀末にいたっておのずと蒸留されて創り出され、しかし、ひとたび創り出されると、「モジュール[規格化され独自の機能をもつ交換可能な構成要素]となって、多かれ少なかれ自覚的に、きわめて多様な社会的土壌に移植できるようになり、こうして、これまたきわめて多様な、政治的、イデオロギー的パターンと合体し、またこれに合体されていったのだと。そしてまた、この文化的人造物が、これほど深い愛着を人々に引き起こしてきたのはなぜか、これが以下においてわたしの論じたいと思うことである。」14-5頁]

国民とはイメージとして心に描かれた想像の政治共同体である。
宗教的想像力が衰退した今日において、唯一、死を説明するもの。
偶然を宿命に転じる力をもっている。
先行するそうした文化システムは宗教共同体と王国

宗教共同体
 真実語(ラテン語、アラビア語、中国語)によって結ばれた求心的・階序的秩序
王国
 周辺にいくほど主権はあせ、境界が不明瞭となる

時間性の変化
「メシア的時間」
即時的現在のおける過去と未来の同時性
「メシア」とは救世主のこと。今この瞬間に約束された神の救いがあるのかもしれない、いやあるのだ、という時間のとらえ方。
「均質で空虚な時間」 あめのようにのびた、私たちがあたりまえと思っている時間。小説と新聞がもたらした時間。

ヴァルター・ベンヤミンの「メシア的時間」と「均質的で空虚な時間」
均質的で空虚な時間とは、近代の私たちが当たり前に受け止めている時間性。カレンダーや時計の時間。
メシア的時間は、過去から未来にわたるあらゆる時間性が「今・ここ」に噴出するような時間性。
「均質的で空虚な時間」は、近代的国民国家成立の前提条件。国民国家が「想像」されるためには、カレンダーの時間にそって同時に進む共同体を想像できなければならない。

小説と新聞のもつ時間性
 登場人物、著者と読者、すべてを包括して暦の時間に沿って進んで行く単一の共同体
「十八世紀ヨーロッパにはじめて開花した二つに想像の様式、小説と新聞・・・これらの様式こそ国民という想像の共同体の性質を「表示」する技術的手段を提示した・・・。」[44頁]
国民を想像するという可能性:古来の三つの基本的文化概念の支配力の低下

 三つの基本的文化概念
1)特定の手写本(聖典)語だけが真理への特権的手段を提供する
2)社会が高き中央のもとに自然に組織されている[という空間概念]
3)宇宙論と歴史との区別不能による、世界と人との期限は本質的に同一であるとの時間概念

国民意識の起源
 ラテン語の秘儀化←共通語
 宗教改革→ルッター訳聖書などのベストセラー出現→俗語の出版流通
 行政俗語の偶然的発達
出版資本主義による特定の俗語(出版語)の流通

 ナショナリズムの変遷
クレオール[新大陸生まれのスペイン人]・ナショナリズム
 18世紀後半から19世紀初頭、南メリカ諸国の新生共和国
 かっての行政上の単位のうえに作られた。
 支配者クレオールの巡礼(移動):行政単位内部と本国との間にとどまる
 ←ムスリム(イスラム教徒)のメッカへの巡礼→ムスリムとしての同一性とまとまり
地方クレオール印刷業者
 経済利害も自由主義も啓蒙主義も、死にがいを提供できず。

俗語ナショナリズム
 地理上の発見→真理語の相対化→言語学者の活躍(辞書編纂)→俗語による地域区分
官僚中間層の増大→俗語の採用→俗語読書人の増大→俗語教育の増大
 アメリカ独立・フランス革命を「国民国家」の枠組みで解釈

公定ナショナリズム
 上からのナショナリズム。ナショナリズムに趨勢によって本来なら排除されたり周辺に 追いやられる権力集団が先手を打つことで応戦する。国民と王国の矛盾を隠蔽。
 プロイセン王国によるドイツの統一、ロマノフ王朝の「ロシア化け」、日本帝国の創造
植民地ナショナリズム
 第1次世界大戦後の植民地の「若き」現地エリートによるナショナリズム←教育・官僚 制度


 わたしにとっての重要ポイント
新聞および小説による国民意識の形成・鼓舞
エリートの養成とエリートの移動(巡礼)による国家のまとまり
求心的時間・空間から均質な時間・空間へ
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by takumi429 | 2006-02-26 21:19 | 社会学入門 | Comments(0)