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エミール・ゾラ『ルーゴンマッカール叢書』 まとめ

エミール・ゾラ『ルーゴンマッカール叢書』 まとめ

イタリア出身のナポレオン軍の工兵あがりの技術者を父に持ち、理工系のグランド・ゼコールを受験したゾラは社会的な装置(mécanisme)に注目しつつ、この叢書を書いた。

巻数題名あらまし装置
1『ルーゴン家の運命』ルーゴンとマッカールの家系のはじまり。
ナポレオン三世のクーデターによるプッサンの動乱。
少年シュヴェールと少女ミエットの愛し方さえ知らない幼い二人の悲劇。少女は流れ弾で死に、少年は憲兵に墓場でこめかみを打たれて死ぬ。
装置:プッサンという街。墓場(死者を飲み込む場)。

2『獲物の分け前』オスマン男爵のパリ大改造の下、地上げによって巨万の富を稼ぐアリスティッド・サッカール。若き後妻ルネは夫の連れ子マキシムと温室で不倫にふける。アリスディッドはルネから金を巻き上げて破産を免れ、ルネは若くして死ぬ。
装置:温室(人工楽園)。パリ(人工都市)

3『パリの胃袋』流刑地から逃げ帰ったフロランはパリの中央市場で働くが、そこの人々の讒言によってふたたび島が流しとなる。
装置:パリのレ・アールの中央市場

4『プッサンの征服』フォージャ神父はマルト・ルーゴンの家に住みこみ、いつしかその家ばかりかプッサン市をも支配するにいたる。しかし狂人となったマルトの夫の放火によって家もろとも焼け落ちる。
装置:王党派と共和派の両方がみおろせるマントの家。

5『ムーレ神父のあやまち』マント・ルーゴンの息子で司祭になったムーレはパラデゥ館の秘密の庭に住むアプビーヌと、アダムとイブのように愛し合う。しかし、彼が庭から去ったため、娘は死に、その葬儀を司祭である彼が司ることになる。
装置:秘密の花園。

6『ウジェーヌ=ルーゴン閣下』ウジェーヌ・ルーゴンは第3帝政で失墜の危機の乗り切り副皇帝にまでなる。装置:政治

7『居酒屋』
『居酒屋』ジェルヴェーズ・マッカールはランチエに捨てられた後、トタン職人クーバーの結婚し、洗濯屋を開業するが、舞い戻ったランチエとクーボーの二人と関係し、アル中となって貧窮死する。
装置:蒸留酒製造装置・居酒屋洗濯屋。

8『愛の1ページ』エレーム・ムーレは娘ジャンヌを救ってくれた医師と不倫し、娘はそれに嫉妬して病死する。別の男と再婚した彼女は娘の墓を訪れ去る。
装置:バルザック邸のあったパッシーの高台から見えるパリ

9『ナナ』ジェルヴェーズの娘ナナは高級娼婦となって多くの男を破滅させるが、最後は天然痘となって死ぬ。
装置:ナナの肉体。

10『ごった煮』プッサンから出てきたオクターヴ・ムーレはアパートの女たちを意のままにあやつる。オスマン様式の表面はきれいなアパートは裏では汚物にまみれ、主人たちと女中との不倫と嬰児殺しが行われている。
装置:オスマン様式のアパート(欲望の館)

11『ボヌール・デ・ダム百貨店』 オクターヴの作った世界初のデパートは女たちの欲望をあおることで大繁盛するが、周りの商店は破産させていく。
装置:デパート(欲望の館)

12『生きる喜び』海辺の家にもらわれたポリーヌ・クニュは莫大な遺産を受け取るが、養い親子に財産をすり減らされる。しかも彼女の財産を散在した婚約者サザールを友人に譲ることになる。
装置:海によって浸食される岸辺の村。金をくすねられる遺産の入った引き出し。

13『ジャルミナール』炭坑に流れ着いたエチエンヌ・ランチエは最初の夜に会ったカトリーヌに強く惹かれる。彼女もランチエに惹かれているが、結局シャバルに暴力的に女にされてしまう。エチエンヌらが中心となって起こした炭坑ストライキは失敗する。炭坑事故で坑内に閉じこめられた二人はようやく愛し合うがカトリーヌは死に、エチエンヌは助かる。労働運動の芽生えを感じつつエチエンヌは炭坑を去る。
装置:炭坑

14『制作』:印象派絵画ジェルヴェーズの長男クロードは画家となって、嵐の夜に出会ったクリスティーヌに理想のモデルを見出し、結婚する。しかしパリを描いた大作は印象派風の絵から毒々しい象徴的なものへと変貌を遂げ、作品を完成できぬまま首をつって死ぬ。
装置:キャンバス

15『大地』兵隊くずれのジャン・マッカールは、農民となってまじめに働く。フーアン老夫妻の土地の生前分与が失敗し困窮する。土地の奪い合いの中でジャンは妻も土地もなくして、軍隊にもどる。
装置:土地(投資と生産の装置)

16『夢』シドニー・ルーゴンの私生児アンジェリックは刺繍細工人に拾われて見事な刺繍細工職人となる。いつか王子さまがと夢見る彼女の元にオートクール家の跡取りフェリシアンが現れ、身分を超えての結婚式で彼女は昇天する。
装置:夢を紡ぐ刺繍

17『獣人』駅助役のルボーは若妻セヴリーヌが養父の愛人であったことを知り、養父グランモランを列車内で殺害する。それをたまたま知ったジェルヴェーズの次男クロードはセヴリーヌと愛人関係になり、ルボー殺害を計画するが、狂った殺人衝動からセヴリーヌを殺してしまう。その後ペクーの妻とも不倫したジャックはペクーと走行中の機関車(ラ・リゾン)でもみ合いとなって二人とも転落死する。運転手のない機関車は兵士を乗せて闇夜を疾走していく。
装置:機関車・鉄道

18『金銭』 地上げの後、サッカールはユニバーサル銀行を設立して、株をつり上げ、空前のバブルを出現させる。しかし株価はついに暴落して、多くの破産者を生む。
装置:株式取引所

19『壊滅』兵士の戻ったジャンは、ブルジョワ階級のモーリスと戦友となる。フランス軍は大敗し捕虜となった二人は逃げ出して、モーリスの姉のアンリエットの元でジャンは療養する。その後、モーリスはパリコミューンに参加。また軍にもどったジャンは彼と知らず銃剣で刺し、モーリスは治療のかいもなく死ぬ。惹かれ合っていたアンリエットとジャンは別れる。ジャンはフランスの再生へと歩み出す。
装置:戦争

20『パスカル博士』パスカル・ルーゴン医師は年金生活をしながら、ルーゴンとマッカールの家系の遺伝を研究し、『ルーゴンマッカール叢書』の内容と同じ文書を残す。年の差をこえて結ばれ自分の子を宿した姪のクロチルドに文書を託して死ぬ。しかし一家の汚名をおそれた母フェリシテは文書をすべて焼いてしまう。唯一残った家系図を見ながら、クロチルドは生まれた息子シャルルに授乳するのだった。
装置:家系樹。遺伝要因が交錯・発現
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by takumi429 | 2011-01-21 02:11 | ゾラ講義 | Comments(0)

サイトなどの情報

TimeOutの都市ガイドは
http://www.timeout.com/
http://shop.timeout.com/city-guides/
をごらんください。

パリの国際学生都市 の紹介は
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E9%83%BD%E5%B8%82
HPは
http://www.ciup.fr/en/
滞在の申し込みは
http://www.ciup.fr/en/devenir_resident/vous_etes_etudiant
http://workflow.ciup.fr/citeu/site/demande/etudiant/e_demande_maj1.php?langue=en&ete=
滞在希望期間をエントリーしておくと、それに適合した館からメールがきます。
そのなかで、あんまり立派な建物ではないけど、日本館でいいやというひとは、
http://maisondujapon.cool.ne.jp/
から申し込んでみてください。

夏休みに開催されている外国の大学のサマースクールについては
一生懸命キーワードを考えて検索してみてください。
あるいは、『地球の歩き方留学編』にも載っています。

ドイツの大学のサマースクール
DAADのサイト
http://www.daad.de/deutschland/deutsch-lernen/sommerkurse/00490.en.html
で調べることができます。
申し込みもネットでできます。

英語のサイトでわかりづらいという人は、
google のchromeをダウンロードしてつかうと、
さまざまな言語のサイトを日本語訳できます。
http://www.google.co.jp/chrome/intl/ja/landing_ch_yt.html?hl=ja

ABYZ Newslinks http://www.abyznewslinks.com/
から世界中のニュースメディアに接続できます。
日本のニュースはほんとに閉じているので、
海外のマスメディア発信のニュースを横目で常々見ておくことをおすすめします。

またgoogleのニュースhttp://news.google.co.jp/nwshp?hl=ja&tab=wn
も外国のニュースにきりかえてみることができます。

ニュースメディアによってはiTuneかRSSのマークをクリックすると、
自動的にニュースがiTuneやそれに類したソフトに配信されます。
PCにつなげればその内容がそのままiPodやそれに類したものにいれられます。

またiTunesを立ち上げて、
一番上にあるバーのなかのStore(s)のホームをクリックして画面を代え、
たとえばVOA(voice of Ameria)とかBBCという文字を
右上のムシメガネの絵のある欄に入れて検索すると
いくつもの無料配信の項目がでてきます。
その中のPodcastoのなかの項目の無料のタグをクリックすると
無用配信がiTuneにされます。
無料配信podcastはたくさんありますので、
自分の目的にあったものをさがしてみてください。
http://www.apple.com/jp/itunes/podcasts/

NHKの ニュースで英会話 http://cgi2.nhk.or.jp/e-news/index.cgi
も無料で英語ニュースから英語が勉強できます。

東外大言語モジュール http://coelang.tufs.ac.jp/modules/
をつかうと 英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語、中国語、朝鮮語、モンゴル語、インドネシア語、フィリピノ語、タイ語、ラオス語、ベトナム語、カンボジア語、ウルドゥー語、ヒンディー語、アラビア語、トルコ語、日本語、が勉強できます。

役に立つサイト探しのためのサイトとしては
all about
http://allabout.co.jp/
があります。活用してみてください。

めがねさんへ
注釈が本文より多いシャーロックホームズ全集は
詳注版シャーロック・ホームズ全集
ちくま文庫版が古本で入手可。
アマゾンか日本の古本屋で検索してみてください。
https://www.kosho.or.jp/public/book/aimaisearchresult.do;jsessionid=B07873AF33FCF0BA1CD48BF7CC986908
もとの東京図書版も古本で入手可。
https://www.kosho.or.jp/public/book/detail.do?tourokubi=49A91F19777085C90B3E52FD6BA36094387BACA5B1E2755A&seq=34&sc=A97636E57E867A12C036DA8DE735CD16
名古屋市図書館にもありますよ。
https://www.library.city.nagoya.jp/licsxp-opac/WOpacTifSchCmpdExecAction.do

シャーロックホームズについてはWikipediaに各国の記事があります。
http://en.wikipedia.org/wiki/Sherlock_Holmes
一番下にはさまざまなサイトがあげられていてめまいがしそうなくらいです。

めがねさんのお友達へ
文句があるならベルサイユにいらっしゃい!  のアドレスは
http://www.monberu.com/

ヨーロッパの庭園史についての入門書は
岩切 正介ヨーロッパの庭園―美の楽園をめぐる旅』 (中公新書)
です。

経験的にいって、広く浅く勉強しようとするよりも、
気になること、おもしろそうなことを一点集中で掘り下げていった方が、
ずっと多くの広い知識と見聞をえることができるように思います。 

宝塚についてはたくさん本があるけど、
津金沢 聡広宝塚戦略―小林一三の生活文化論 (講談社現代新書)』
なんて本から読んでみてはいかがでしょうか。
品切れだけど、アマゾンの古本で簡単に手に入ります。

日本のマンガについては
呉智英『現代マンガの全体像』双葉文庫
が基本書です。
マンガ好きだとマンガのことがよくわかっていると錯覚しがちですが、
すでに手塚のストーリー・マンガの誕生から60年以上がたっています。
この間に日本で驚異の進化と発展をとげたこのメディアについては
こうした基本書を読むことも無駄ではないでしょう。

いやー、世の中おもしろいことだらけですね。
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by takumi429 | 2011-01-08 00:54 | ゾラ講義 | Comments(0)

1.講義・社会学入門

<社会学入門>のカテゴリでは以前大学でした「社会学入門:近代とは何だろうか」の講義をアップしていくことにします。

社会学入門 近代とは何だろうか。

1.社会学とはなんだろうか。
(1)社会学の非体系性
社会学とはなんだろうか?
「社会学」という名前を聞いて、私たちはすぐにそういう疑問に駆られます。
これが法学や経済学などであったなら、これほどの疑問はわいてこないでしょう。それはそれぞれ、法と経済を扱う学問に決まっているからです(もちろんそこから先は案外むずかしい関門が待ちかまえているのでしょうが)。
ところが「社会学」と聞いても私たちには何の具体的なイメージも湧いてきません。社会を扱う学問というなら、「社会科学」という、法学も経済学もその中にふくまれるような大きな学問の総称があります。あえて「社会学」というからには何か意味がありそうです。
しかたなく私たちは社会学の教科書を手に取ります。そこでは人間が文化を学びながら家族の中で成長して世の中にでてさまざまな活動の従事したり、そこから外れたりすることが、さまざまな社会領域について書かれています。そこから受ける印象はきわめて散文的のものです。
我慢強い人は社会学の古典とされる作品を勧められて手に取ることでしょう。そこで受ける印象は教科書とはまるで異なったものでしょう。確かにおもしろい、しかしこれが教科書でならった社会学とどう関係しているのかわからない。というよりそれぞれの作品がばらばらに存在していて、いっこうに関連しあっていないのにきづくことでしょう。
実は社会学の主要な業績は相互に密接な関連を持っていないことが多いのです。教科書をよく読むと、実はいろいろな学者のさまざまな業績がつなぎあわされているだけのことがわかります。

(2)社会学は落ちこぼれが作ってきた
なぜこんなことになってしまったのでしょうか。
それはじつは社会学の重要な業績をつくった学者たちが、じつは社会学なんてものを学んだこともない部外者だったからなのです。
こころみに、社会学の巨人と呼ばれる人とその出身学問を列挙してみましょう。
テンニースは古典言語学、ヴェーバーは法律学、ジンメルは哲学、デュルケームも哲学、
パーソンズは経済学、ハバーマスは哲学、の出身です。これら文句なく社会学の著名な学者とみなされている学者が、じつは学生時代に社会学なんて勉強していなかったのです。ところが自分の研究をしていくうちに、もともとの学問の枠を飛び出して、悪く言えば、落ちこぼれて社会学者になってしまったのです。つまり社会学は既存の学問からの落ちこぼれが作ってきたという歴史があるのです。
(ちなみに、社会学出身の著名な学者としては、マートン、(それから最近ではベック)という人がいますが、巨人と呼ばれるにはすこし粒が小さいように思います)。
社会学の主要な業績はこうしたよそ者の業績をのけると、ほとんど残りません。つまり社会学というのは、じつは、一個の学問として内在的に発展してきたのではないのです。他の学問領域をしている学者がその領域に収まらなくなって飛び出し、その業績が「社会学」と名付けられているだけといっても過言でないのです。
 ですから「社会学」というのは名の下にこれらの学者の業績がくくることができるとしたら、それは内容のつながりや共通性によるのではありません。では何が、これらの学者に共通なのでしょうか。

(3)「社会学」という名の問題意識
社会学の巨人が既存の学問枠組みを飛び越えざるをえなかったのはなぜか。その理由は彼らがかかえた問題意識にあります。彼らは、既存の学問枠組みで収まりつかない問題意識を抱えてしまったのです。それは、今自分が生きているこの時代、あるいは社会と言ってもいいですが、それはいかなる時代(社会)かという問いです。彼らはこの問いに答えるにあたって、自分がその社会(時代)の中に生きているときにわき上がってくる、違和感や肌触りを捨て去ることができませんでした。そうした時代と社会についての自分の心情を切り捨てずに、むしろ生かした形で時代と社会をとらえようとし、その結果、既存の安定した学問の枠を踏み越えざるをえなかった、そういう人たちなのです。
 つまり彼らには共通した問題意識がありました。すなわち、自分を取り巻く社会はどのように変わってきたのか、またこれから変わっていくのだろうか、という問いです。いいかえれば、自分を取り巻き支配しているこの時代(近代あるいは現代)とはいかなる時代なのかという問いです。これをひとまず、「近代とは何か」という問いとしてまとめることにしましょう。
 極言すれば、社会学には共通した体系だった内容などないのです。あるのは共通の問い、つまり、今自分が生きているこの社会とはどんな社会であり、それはどう移ろい行くのか、という問いなのです。
 ですから社会学の諸業績を振り返るためには、内容の共通性や体系的な連関からみるのでなく、この「近代とは何か」という問いに、これまで社会学者はどのように答えてきたのか、という観点からこそ振り返る必要があります。というより、そこにしか社会学者たちの共通性はないからです。

(4)講義の方針
ですから、この講義では、「近代とは何か」という問いにどのように答えているか、それによって社会学の古典的作品を見ていくことにします。また「近代とは何か」という問いに答えている業績ならば、一般には社会学者とみなされていない者の作品も見ていくことにします。具体的には、ボードレール(詩人・評論家)、ベンヤミン(文学者)、ゾラ(作家)、マクルーハン(文学者、メディア論者)、アンダーソン(東南アジア研究者)、の作品も見ていくことにします。
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by takumi429 | 2011-01-01 00:01 | 社会学入門 | Comments(0)