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医療社会学 第14回

物語療法から「メタファーを聞く」看護へ
テキスト

ケース1
自分もシングルマザーである元保健師が、何人かのシングル・
マザーに「あなたにとって子育ての意味とは何か」と尋ねた。3人以上の会話では、「新しい恋人(男性)の出現は周りから非難される」、「けなげな母親を演じることが要求されているのを感じる」といった発言がみられた。質問者との2人だけの会話になると、うってかわって母親たちは、自分の個人的体験を話し始めた。ただ「自分にとって子育ての意味は〜だ」というふうには答えず、かわりに決まって①子どもの父親との出会い、②子どもの父親との別れ、③子どもの出産、④自分母親との関係、の4つについて語った。

意味は文脈としての物語に回収されそこで意味を持つ。

物語心理学(narrative psychology)
人間はものごとから「物語」を作り、その物語の流れの中で、ものごとの「意味」を与える。自分の物語の中での自分を「物語的自己」という。
例:看護師をめざして日々努力する私

「物語」はしばしば外から与えられ、本人を支配する:支配的物語
例:
物語:赤い糸で結ばれた王子さまと結婚して幸せに暮す「私」
現実:ソファーに転がりながらビールを飲みながら中日巨人戦を観るデブの男に給仕する「私」

物語療法(心理療法の1つ) 
支配的物語が本人を苦しめている時、その物語からクライエントを開放し、みずから自分に合った物語を創造できるよう手助けする。別の物語を押しつけてはいけない。
新しい物語形成の種はそれまでの物語に収まらない「ユニークな結果」
新しい物語の創出の種となる。
例:マッチョな男性優位主義(machisimo)の物語に支配されてオレは男だ、仕事も女も「モノにすればいいんだよ」と思い込んでいる「私」(じつはもう疲れ果てている)
「捨てた女」のなかで唯一「消えた女」の一言、「あれは何だったのか、何とつぶやいたのか」
立ち上がる場面:蒼茫たる空と海、赤く染まる地平線、浜辺に立つ「自分」
引き出す質問:「そこで何をしているんですか」
クライエントの答え:「砂浜のなかに何かを探している」。
質問:「それは小さいもの?大きいもの?」
答え:「とても小さい、砂と区別がつかないくらい」
質問:「あなたはその小さなものを探しにその浜辺に来た?」
答え:「そう、私は失くしたそれを探しにここに来た」
質問:「それは消えた彼女の一言が示したもの」
答え:「そうだ、あの頃、オレはそれが聞き取れなかった。それを探しここに来た。」
質問:「今はいつ頃?」
答え:「夕暮れだ。夜は近い。夜になったら・・・」
質問:「夜になったら?」
答え:「夜になったら見つけられない」
質問:「でも夜は降りる」
答え:「夜になった。とても暗い。だが・・・」
質問:「だが?」
答え:「星が出た。満天の星だ」
質問:「あなたは星を見上げている?」
答え:「そうだ、オレは星を見上げている」
質問:「星を見上げて・・・?」
答え:「星の中に何かを探している」・・・
質問:「何を探しているの?」
答え:「消えた女の一言、それとも」
質問:「それとも?」
答え:「消えた女。それとも」
質問:「それとも?」
答え:「失くした自分。夜の空を見上げていた頃のあの自分」
自分探しの旅の物語の創出

メタファーを聞く
物語生成の核としてのメタファー

ケース2
下肢切断の患者の語り手術看護師Tさんはもともとは、病院の窓口で働き、30歳になってから看護師に転身。そのため、看護の空気になじめないでいる。ある日、初老の女性患者を術前訪問患者は糖尿病の悪化で片足を切断する手術を受けることになっていた。てきばきと質問と説明ができないTさんに対して、患者は1時間の長きにわたって物語った。途中、師長から呼び出しがあった。師長いわく「遊んでいるかと思った」「だって患者さんはやっぱり不安だからついつい長く話すでしょ?」とTさん。「なるほど、そうだろうね」と著者(勝又)。「でもその人は『不安 』なんていう言葉を使っていたの?」「うん、たしかに『不安』ていう言葉は使ってなかった」Tさんはしばらく考えてから、「そういえば、『足に悪いことをした 』って言っていたわ」Tさんの話を聞いていた私は唾然としました。しかし気を取り直して、「それから患者はどんなことを言っていたの?」「ふん」(うん)と関西人のTさんは考えてから、「「私は昔から病気と付き合ってきた、お父さんの看病や義理のお母さんの看病やら、ずっとしてきた」と言っていたわ」「それで?」「ふん」私の質問にTさんはだまりこんでしまいました。「じゃ、思い出したらまた教えて」と私。後日、Tさんからメールがありました。「あれからずっと思い出そうとしたのだけど何も思い出せません。私はいったい1時間も何を聞いていたのでしょう」

「足に悪いことをした」→足の擬人化 足を人としてみる(隠喩) 
足は自分の一部から別の(足)客体へと変わる
→下肢切断を先取りして引き受ける

認知言語学におけるメタファー論
メタファーとは写像である。
写像(矢印→を扱う数学を圏論とよぶ)
メタファー表現「あの男は私を汚れたゾウキンみたいに捨てたの」
 ゾウキンをめぐる話を使って自分の状況をとらえる(概念する)。
写像関係
 ゾウキン→私
 汚れた →もう若くない
 捨てる →別離
メタファー表現:「恋は旅」
旅を通じて二人の恋の過程を理解把握する。
 同乗者→君と僕
 道のり→恋愛の過程
 分かれ道→別離

動作によるメタファー(別の物語への写像換え)
ケース3
医療器具をつけている幼児のIちゃんは言葉で話すことはできないが、行動によって生命維持としての生活を表現する場面が見られた。アンパンマンのビデオを見ていたときのことである。急にIちゃんが倒れた。研究者はIちゃんの具合が急に悪くなったのかと驚き、「どうしたんですか?」と母親に尋ねた。すると母親は「アンパンマンが倒れると、倒れて気管切開の所を外すの。アンパンマンが助けられると(顔をつけかえてもらう場面)元気になるの」と答えた。Iちゃんは気道が狭窄しており、吸引が必要なため、気管切開術を受けている。Iちゃんはアンパンマンが助けられると、母親に気管切開の所をつけてもらい、立ち上がり、ぱちばちと拍手した。Iちゃんはアンパンマンが元気ない状態を、気管切開の所が外れてしまい元気がないことにたとえて表現している。Iちゃんは、気管切開生命を維持する大切な部分だと感じている

多くの人はIちゃんを「かわいそうなけなげな幼児」の物語で語っている。
しかしIちゃんはわざと、呼吸器を外すことで自分を、苦境にあるアンパンマンと対応(写像)させることで、アンパンマンのように、苦境に勝ち抜くヒーロー、としての自分という物語で自分をとらえ返した。

# by takumi429 | 2020-08-03 16:24 | Comments(0)

医療社会学 第13回

医療社会学 第13回
ベイトソン理論と家族看護学
テキスト

家族はサイバネティクス的なシステムである

ベイトソン理論理解のために
1)うそつきのパラドクスの階層化による解決
2)暴走するエアコン
3)ダブルバインド論

嘘つきのパラドクス
「私の言うことはウソだ」

階層化による解決
「私の言うことはうそだ」←これだけはうそではない
 統合失調性患者はこの階層化できない
  冗談が通じない

エアコンの暴走
「冷房と暖房を両方かける」(by小池知事)

共依存
妻がつくせばつくすほど、ずにのって荒れる夫

ダブルバインド
統合失調症の説明
矛盾したフィードバックと階層化の禁止

家族療法から家族看護学
ケース
主婦A(43歳)は、神経性の下痢で入院していた。ほぼ治癒して退院したのだが、家に戻るとまた再発してしまった。Aさんの病状はAさんだけも問題ではないと感じた看護師たちは、Aさんの家族を呼んで話を聞いてみた。
面接の場で、Aさんの夫は家族に背を向けて座り、もっぱらAさんに向かってだけ断定的な口調で話をしていた。それに対して、子どもたちももっぱらAさんにうったえるかたちで話をしていた。
Aさんが、親同士のコミュニケーションと子どもたちのコミュニケーションの間にあってちょうど両者から圧力をうけるかたちになっているのがみてとれた。

家族療法
病んでいるのはシステムとしての家族
それが家族の一人に顕在化しただけ

直線的因果論から円環的因果論へ
教科書49頁

犯人探しの介入をしない

家系図(ジェノグラム)を作ろう


# by takumi429 | 2020-07-27 11:58 | Comments(0)

医療社会学 第12回


ストレスとコーピング理論
関心がもたらす心の地図のあり様
ケアの優先 ベナー看護理論

ストレス(by セリエ)
脅威(ストレッサー)に対する生体の共通した応答反応

ストレス症候群の変化
①警告反応期
②抵抗期
③疲弊(ひへい)期

平均ストレス表
配偶者の死 100
離婚    73
失業(解雇)47
結婚    50

ラザルスのストレス心理学
脅威(ストレッサー)をどう評価するかによってストレスは異なる

ストレスの対処(コーピング)の2種類
(a)問題解決に焦点をあてた対処
(b)感情に焦点をあてた対処

ラザルス 「ストレスの現象学」を提唱
(脅威となりうる)出来事が「心の地図」のなかでどのように現れるのか

ハイデガー『存在と時間』
関心が「心の地図」での物事の有り様をきめる

人はなぜしばしばカサ☂を忘れるのか
①降り続く雨→関心:降られたくない・濡れたくない
 カサの存在に気づく
②雨が止んだ→関心:濡れる心配はない 別のことへ
 カサの存在に気が付かない カサの存在は消えた。
関心によって存在は有ったり消えたりする。

気づかい(関心)による心の地図(意味の世界)
ピアニスト
 腱鞘炎=音楽家としての人生とその世界の崩壊
一般人
 腱鞘炎=ちょっとした障害

ベナー看護論
病いはしばしば患者の意味の世界の崩壊をもたらす
患者は治癒だけでなく意味の世界の再建を必要とする
看護は患者の意味世界の再建を援助する

レポート課題
この授業を受けて、「ためになった」と思った内容を
A4レポート1枚にまとめる。(学籍番号・氏名を忘れずに)
7月28日15時までに
事務室の「医療社会学」のレポート入れに投函すること。
郵送でも構いません。
封筒の赤字で「医療社会学レポート在中」と書いてください。

# by takumi429 | 2020-07-20 12:15 | Comments(0)

医療社会学 第11回

人工知能論とベナー看護理論

人工知能(AI)の3つのブーム
第一次AIブーム(1950年代~1960年代)
 1956年夏 ダートマス会議 
  「人工知能」:機械に人間の知的能力を模倣(シュミレーション)させる
 計算を効率化させる理論の不足とコンピューターの処理能力の不足によりすぼむ。
第二次AIブーム(1980年代~1990年代)
 エキスパート・システム スタンフォード大学のファイゲンバウムら
  エキスパートの診断の仕方をコンピューターに移す。
  「もし・・・なら、・・・せよ」
  みずからは学習をおこなわない。エキスパートの知識による診断を再現するだけ
第三次AIブーム(2000年代~)
 脳の神経系を数理的にコンピューターで再現
 みずから学習するコンピューターの出現(機械学習)
 https://www.youtube.com/watch?v=s5_Pk3CjhNA&feature=youtu.be
 https://www.youtube.com/watch?v=U8uqieKYtY4&feature=youtu.be

ベナー看護理論が影響を受けているのは、
第二次AIブーム、とくにエキスパート・システムに対する
ドレイファス兄弟の反人工知能論

ドレイファス兄弟の「技術習得モデル」
①初心者 状況を見ずに規則通りにふるまう
②上達した初心者 状況依存の要素にきづく
③上級者 目的をもって臨機応変にふるまう
④熟練者 過去の記憶と比較しつつ状況を把握する
⑤エキスパート 技術は体の一部となって意識にのぼらなくなる
AIはせいぜい③にしかたどりつかない、とドレイファス兄弟は主張。
看護においてこの理論の検証を依頼→ベナー看護理論

ベナーの提唱する看護のおける技術習得モデル
①初心者 状況と関係なくバイタルサインのデータだけに注目して原則論をふりまわされる
②上達した初心者 くりかえし起こる意味ある状況に気づく
③上級者 看護計画を立てて看護できる
④熟練者 状況を全体的にとらえ「格律」(maxim)よって看護する
 maxim (格律・金言・格言)
熟練した者だけが使い理解できる言い回し
 例:ボールは上からたたけ(野球) 
   鉗子はすこし上から滑らすように差し入れろ(日野原←ベテラン看護師)
⑤エキスパート 状況を直感的に把握し問題を正確につかむ

レポート課題
この授業を受けて、「ためになった」と思った内容を
A4レポート1枚にまとめる。(学籍番号・氏名を忘れずに)
7月28日15時までに
事務室の「医療社会学」のレポート入れに
投函すること。

# by takumi429 | 2020-07-13 14:59 | Comments(0)

医療社会学 第10回


文化人類学とレイニンガー看護理論

西洋によるアメリカ・アジア・アフリカの侵略・制服
さまざまな民族について学問(民族学)

文化人類学:文化の比較考察から人類を考察する

安楽椅子の文化人類学
 フィレイザー『金枝篇』
現地調査(フィールドワーク)の人類学
 トロブリアンド諸島に閉じ込められたマリノフスキー

文化の内側からの理解
 外側からの理解(エティックな見方):裸踊り
 文化の内側からの理解(イーミックな見方):雨乞いの踊り
大文字焼き
よそ者の見かた「大文字焼き」
 山を焼いて火で文字を書く
京都の人の見かた:「五山の送り火」
 お盆に帰ってきた霊魂をあの世に送る←霊魂(祟り)への恐怖

文化人類学(出来事をその文化の内側から理解する)
医療人類学(病気をその文化の内側から理解する)

疾患disease
外側(西洋医学)からの診断:上気道感染/グリッペ
 病因:雑菌感染/インフルエンザ感染 
 対処:口腔殺菌/対症療法・抗インフルエンザ薬投与
病いillness
内側(日本文化)からの名称  「風邪」
 病因:邪悪な空気に触れた
 対処:暖かくする・体に何か入れる(注射・卵酒・ドリンク)

説明モデル
 どんな病気か、なぜその病気にかかったのか、どうしたら治るのか、についての患者が抱いている考え
 病院にまで来るからには、患者は患者なりの病気についてのイメージ(説明モデル)が存在する。
 「無意味な素人考え」として頭ごなしにただ否定すると、患者はもう来院しなくなる、
あるいは言うことを聞かなくなくなる(ノン・コンプライエンス)
説明モデルを知るための質問(クラインマン)
1)あなたは病気(症状)の原因は何だと思っていますか。
2)症状が現れた日時について、その時に現れた特別の理由が思い当たりますか。
3)その病気(症状)は、あなた自身にとってどのような影響をもたらすと思いますか。それはどういうふうに起こると思いますか。
4)病状はどのくらい重いと考えていますか。そして、治るまでどのくらいの期間がかかると思いますか。
5)どのような治療を受けるべきだと考えていますか。
6)治療で得られる効果のうち、あなたにとって何がもっとも大切ですか。
7)この病気によって引き起こされた最大の問題は何ですか。
8)この病気について、あなたは何をもっとも恐れていますか。

身体化(東アジアの医療文化の一つ)
精神的問題が身体に現れる
肩こり 心的なストレス→肩が凝る
登校したくない子どもの腹痛

レイニンガー看護理論
医療人類学;人はその固有の文化のなかで病む
ならば看護にもその文化にふさわしいケアがあるはず→文化ケア

# by takumi429 | 2020-07-06 10:02 | Comments(0)

医療社会学 第9回


1.ノンバーバルコミュニケーション
 言葉によらない情報伝達
1)周辺言語
 話す抑揚、調子、語尾
 節酒の指導する医師の話しぶりによって患者のコンプライアンスがちがう

2)ボディ・ランゲージ
 意思を伝達するための身ぶりと手ぶりなどの体の動き
 a.目 視線と目つき
 b.動作
 c.身体接触 
  例 アンナおばちゃん 教科書pp.164-5
赤ん坊の突然の呼吸停止 メキシコ人家庭では少ない
 d.対人距離
3)あらゆるものが意味をもちうる
  車のクラクション、点滴の色、個室への移動、早くない駆け足
  足浴:「いっらっしゃい、よく来てくださいました」→良好なコミュニケーション

2.小論文の書き方
1)マインドマップ あらゆるテーマ・課題にたいする着想展開の方法
①白紙の中央の円にテーマを書く
②テーマの円から線をのばして、思いつくことを書き円で囲む
③さらにそこから線をのばし、思いつくことを書く

2)アウトライン(目次)
アウトラインを目次の形に整理
ツリー(樹形図)を箇条書きにしたもの
目次の箇条書きを肉付けする形で文章をつくる

3)パラグラフ・ライティング 
段落(パラグラフ)はトピックセンテンス(言いたいこと)とその説明から成る
「留学には大いに意味がある。第1に、 留学は私たちの世界を外へとひらく。第2に、 留学は私たちが何者かを再考させる。つまり留学は、私たちの世界を広げ、深める。それゆえ留学はしてみる価値があるのである」
           ↓
パラグラフを開いて、
序論と結論部に分け、あいだに補完部分をはさみこむ(サンドイッチ構造)
・初めのトピック・センテンス→序論
トピックの提示
トピックの限定(結論)

・補完部分1→パラグラフ2
・補完部分2→パラグラフ3
・補完部分3→パラグラフ4
・・・
・再結論→結論部

パラグラフ1(序論)
(導入)近年、面接などいろんな場面で留学体験の有無をたずねられることがある。(問題提起)はたして留学にはそれほどの価値があるのであろうか。(結論)私見によれば、留学はするだけの価値のある。(つなぎ)なぜなら留学は次の2つの効果があるからである。
パラグラフ2
(トピック・センテンス)第1に留学は私たちの世界を外へとひらく。(説明)わたしたちの多くは生まれた日本からでず、日本での常識をあらゆるところで通用すると思っている。しかし、・・・。
パラグラフ3
(トピック・センテンス)第2に 留学は私たちが何者かを再考させる。(説明)留学先でわたしたちはたえず自己紹介に迫られる。どこで生まれ育ったのか、どうしてここに来たのか、何をここでしたいのか、などなど。そうした自己紹介・自己提示の繰り返しのなかで、いやおうなくわたしたちは自分が何者であるかを意識せざるをえなくなってくる。・・・
パラグラフ4(結論部)
留学はわたしたちの世界を広げ深める。(再結論)留学は多くの労苦を払ってもするに値する貴重な経験である。


# by takumi429 | 2020-06-29 17:30 | Comments(0)

医療社会学 第8回


 現象学から実存心理学へ
 トラベルビーの看護理論

前回の復習
理論心理学が使えない
 行動主義心理学
  生理的刺激と反応のパターンをさぐる 心はブラック・ボックス
 認知心理学 
  人間の心の代わりに電脳をさぐる

患者の心:看護の対象
病気になって落ち込んだり不安になり、
とりわけ死の恐怖とたたかっている心
 理論心理学:「使えない」
 
現象学(内観心理学の復権)
 心の中の地図
 例:神戸女学院(≒南山大学+金城大学)出身の嫁、
   大垣から逃げ出し阪南市に住む
  嫁の「心の中の地図」:阪南市は関西圏の内、大垣は地平線の向こう

現象学 byフッサール
 ものごとが心の地図の中でどのように現れるか、を探る
 あたりまえの「客観的現実」を括弧に入れる(疑う)
  ←第一次世界大戦のよる現実崩壊

ハイデッガー『存在と時間』 ←第一次大戦参戦し戦士した仲間の体験
 「ある」ということ(存在)をなんとなくわかった気になっている
 「世人」(das Man)(だれでもないふつうの人)への頽落
man
1. verwendet, um irgendeine Person od. eine Gruppe von Personen zu bezeichnen, die man nicht genauer bestimmen kann od. will: Man hat mir das Fahrrad gestohlen; Man hat ihn zu einer Geldstrafe verurteilt; Weiß man schon, wie die Wahlen ausgegangen sind?

used to refer to any person or group of people that cannot be identified or wanted: the bike was stolen from me; He was fined; Do you already know how the elections ended?

正確に特定したり、望んだりできない個人または人々のグループを指すために使用されていました。自転車が私から盗まれました。 彼は罰金を科された。 選挙がどのように終了したか知っていますか?

死に直面したとき、世人から自分自身にもどる
のっぺらぼうな時間や空間は、死へと集約されそこから再構成される
12時前の15分=12時あとの15分 のっぺらぼうの時間
(死確定の塹壕からの)突撃(12時)まであと15分!
 ありふれた風景→死の直前に見るかけがえのない風景
 ありふれた存在→かけがえのない存在として現れる:存在への覚醒

フランクルの実存分析
『夜と霧』(1947)
アウシュビッツ強制収容所での体験の記録

日常の世界が崩壊したとき、自然の美があらわになる
ある夕べ、私達が労働で死ぬほど疲れて、スープの椀を手に居住棟のむき出しの土の上の床にへたりこんでいたときに、突然、仲間が飛び込んで、疲れていようが寒かろうが、とにかく点呼場に出てこい、と急き立てた。太陽が沈んでいくさまを見逃せまいという、ただそれだけのために。
 そしてわたしたちは、暗く燃あがる雲に覆われた西の空を眺め、地平線いっぱいに、鉄(くろがね)色から血のように輝く赤まで、この世のものとは思えない色合いでたえずさまざまに幻想的な形を変えていく雲をながめた。その下には、それとは対照的に、収容所の殺伐(さつばつ)とした灰色の棟の群れとぬかるんだ点呼場が広がり、水たまりは燃えるような天空を映(うつ)していた。
 わたしたちは数分間、言葉もなく心を奪われていたが、だれかが言った。
 「世界はどうしてこんなに美しいんだ!」

意味を求める人間存在(実存)
あなたは壕の中で作業をしている。灰色の夜明けが辺りを包む。頭上の空はいちめん灰色だ。どんよりとした薄明に、雪も灰色だ。あなたの仲間がみにまとうぼろぼろの衣服も灰色だ。その顔も灰色だ。
 あなたはまたしても、愛する妻と語らい始める。あるいは何千回めかに、天に向かって嘆き、問い詰める。何千回目かに、なんとか答えを得ようと煩悶する。わたしのこのくるしみにはどんな意味があるのだ、この犠牲にこうしてじわじわと死んでいくことに、どんな意味があるのだ。
 目前にある惨めな死に最後の抵抗をこころみるうち、あなたは、いちめん灰色の世界を魂が突き破るのを感じる。最後の抵抗のうちに、魂がこの惨めで無意味な世界のすべてを声、究極の意味を問うあなたの究極の問いかけにたいし、ついにいずこからか、勝ち誇った「しかり!」の歓喜の声が近づいてくる。
 その瞬間、あけゆくバイエルン地方の朝の陰惨たる灰色一色のただなかに、地平線上にあたかも舞台の書割のように浮き上がる、遠い農家の窓に明かりがともる。
 光は暗黒に照る……。
ヴィクトール・E・フランクル. 夜と霧 新版 (Kindle の位置No.1023-1027). 株式会社 みすず書房. Kindle 版.

人間は意味をもとめる動物である
人間は過酷な状況に苦しむだけでなく、
その状況の意味の欠如に苦しむ

ロゴテラピー
患者が人生に意味を見いだせないとき神経症となる
その意味を見いだせるよう援助する

トレベルビーの看護論

病いに否定的な意味、あるいは意味の欠如しか見いだせない患者に
積極的な意味を見いだせるよう、共感と同情をもって援助する

# by takumi429 | 2020-06-23 07:56 | Comments(0)

医療社会学 第7回

心理学と看護理論

1理論心理学

0)心理学に対する過剰な期待と落胆

橋本治『帰ってきた桃尻娘』(1987年)
あたし 一応、 心理学 の 方 に 進も う とは 思っ てる ん です けど、 それ で 見 た 心理学専攻 っていう のには、 ロク なのっ て あり ませ ん でし た。 あたし は、 はっきり 言っ て 人間 心理 という のを 学び たい ん だって いう こと な ん です けど、 そこ に ある の って、 人間 の 心理 じゃ あり ませ ん でし た。 人間 の 心理 じゃ なく て なん なのか って いう と よく 分り ませ ん が、 ともかく それ は、 ほとんど 工学部 とか 理学部 とか に あたし が 行っ た ん なら 面白 が れる かも しれ ない なァ っていう よう な こと だっ た ん です。「 私 は、 人間 を 勉強 し たい 訳 で、 機械 を 勉強 し たい 訳 じゃ ない わ。 私 は 文学部 に 来 た って いう のに、 どうして 数学 なんか の 勉強 を し なく ちゃ いけ ない のよ」 って、 そう 思い まし た。〝 睡眠・夢、 精神 活動、 情動 などに 随伴 する 生体 の 電気 活動 を ポリ グラフ 的 な 視点 から 解説 し たい〟 なんて、 ほとんど 医学部 じゃ ない のよ って、 そう 思い まし た。〝 ポリ グラフ の 指標 は 種々 ある が、 脳波( 含 誘発 電位、 事象 関連 電位)、 眼球 運動、 皮膚 電気 反射、 脈 波、 心拍 など 体 性 系 及び 自律 系 を 各種 実験 研究 例 から 紹介 する。 教材 は 当方 で 準備 し た もの を 使用 する〟 なんて、 それ は ほとんど、「 私 が 訳 の 分ら ない こと を 一方的 に 教える から、 お前 達 は それ を 黙っ て 拝聴 する よう に」 って、 そう 言っ てる だけ じゃ ない の って、 思い まし た。・・・
『 講義 要項』 見 てて、「 ああ、 心理学 専攻 って つまんない ん だ」 って 思っ てて、 そう いえ ば 岸田 センセイ、 大学 の 研究 室 って ネズミ ばっかり 追っかけ てる ところ だって 書い て た なァ とか思っ て、「 あ、 そう か、 大学 の 心理学 って、 人間 の 心理 を 学ぶ とこ じゃ なくっ て、〝 心理学〟 っていう 外側 だけを 学ぶ ん だ」 なんて こと に 気がつい た ん です。 心理 の〝 学〟 だけ 学ぶ ん だっ たら、 理論 とか って いう の いる よ なァ。〝 学習〟 とか〝 知覚〟 とか っていう よく 分ん ない どう でも いい こと の〝 理論〟 ていう のを ねェ。 そうしたら、 ネズミ っていう のを 迷路 で 走らす わよ ねェ、 とか 思っ て。 ひょっと し て もう、 ネズミ とか って いう のは もう 走り きっ ちゃっ た から、 その 走り きっ ちゃっ た こと に関する 統計 とか なんとか とっ てん のか なァ、 そん で コンピューター が あん のか なァ、 そん で〝 統計学〟 なんて あん のか なァ……、 どっち に しろ あたし には 関心 ない なァ、 とか 思っ て、 今や あたし、 はっきり と 心理学 なんか 専攻 する つもり なくなっ て ん です。

心理学のモデルチェンジ
1)内観心理学 内観(内省)による心理学 自分の意識体験を観察
   →現象学
2)行動主義心理学
 パブロフの条件反射
  餌+ベル→犬→よだれ
    ベル→犬→よだれ
    ベル(刺激)→よだれ(反応)のパターンの確立(学習)
 刺激(S)と反応(R)のパターンを探るのが「心理学」
 人間心理はブラックボックス 「そんなものわかるわけない」

3)認知心理学
   認知(頭の働きかた)をさぐる 
   人間の頭を解剖できないししても認知の仕組みがわかるとは限らない
   コンピューター(電脳)でシュミレーション
    同じ刺激(インプット)に対して同じ反応(アウトプット)がでてくるなら、
    同じことが、内部でおこなわれているかもしれない(強いAI)

人間心理そのものからどんどん遠ざかっていく

2精神分析からカウンセリングへ
1.フロイドの精神分析
 夢解釈 教科書pp.118-9 ある婦人の夢
  抑圧された無意識は夢や間違いに現れる
意識の3分類
 意識 
 前意識(さっきまで意識されていた)
 無意識(意識することを抑えつけられている)
意識の3層
 エス(それ) 本能のるつぼ
 自我
 超自我(自我を裁く 成長期の両親の要求と禁止が内面化したもの)
エディプス・コンプレックス
 母親と一体になりたい欲望を禁止された青年は父のようになって母のような女を得ようとする。

2.サリヴァンの人間関係論的精神医学
 転移:患者が本来身近な人間にもっていた感情を治療者に向けること
 転移を利用して、患者が誰にどんな問題を抱えているか、をさぐる
 人間関係のゆがみ→精神のゆがみ

3.ロジャーズのカウンセリング
クライエント(心理的問題をかかえた人) 自己概念と実際の自分のと不一致に苦しむ
 一人息子が家を出る 息子の成長のためにりりしく見送る私⇔一緒にいてほしいと思う私

3.ペプロウの看護理論
サリヴァンの精神医学の影響? 転移への注目
 看護師にたいする患者の転移 ときには母親、ときには姉、ときには先生、ときには同僚、を求める
 あえてその期待に応えてやろう 教科書pp.133-4

# by takumi429 | 2020-06-15 21:22 | Comments(0)

医療社会学 第6回

セルフ・コンセプト(自己概念)

1.自己概念self concept
自分自身にたいして持っている考え、イメージ

Longman contemporay advanced dictionary をひいてみると

con‧cept
an idea of how something is, or how something should be done:
concept of
the concept of total patient care
the concept of infinite space

im‧age
1 public opinion
the opinion people have of a person, organization, product etc, or the way a person, organization etc seems to be to the public ➔ reputation:
image of
attempts to improve the image of the police
2 idea in mind a picture that you have in your mind, especially about what someone or something is like or the way they look:
image of
He had no visual image of her, only her name.
He had the clearest image in his mind of his mother and father.
3 picture/what you see
a) a picture of an object in a mirror or in the lens of a camera:
She peered closely at her image in the mirror.
b) a picture on the screen of a television, cinema, or computer:
Jill Sharpe was little more than a name, a glossy image on a television screen.
c) a picture or shape of a person or thing that is copied onto paper or is cut in wood or stone:
carved images

日本語の「イメージ」に近い用法もあるが、自分が心の中にもつ場合のimageはやはり、picture絵になって外見的なものにかたよる。
しかし、「自己概念」は内面的なものや能力的なものもあるので、image はふさわしくないのだろう。

2.「みにくいあひるの子」引用

3.自己概念 の特徴
・必ずしも実際の自分と一致するわけではない(ズレがある)
例 大人ぶる少女
  ヤクザ映画(北野映画)を観たあとの観客

・人は自己イメージに基づいて行動する
例 「英語は話せません」と英語で言って逃げ出す日本人

・自己概念は、親しい人たち(重要な他者)の反応によって形作られる
紫の服を着たら「魔女みたい」と息子にいわれて以来、似合わないと思っていた女性
たいてい、似合わない色を似合うと思い込んで、似合う色を似合わないと思っている。
「グズだ・ドジだ」と両親に言われ続けた子供
「ケアレス・ミスが多いから」と言われ続けてそう思い込む

・人はできれば肯定的な自己概念を持ちたい
例 乳がん→乳房摘出手術→「もう自分は女ではない」との考えに落ち込む

若桑みどりの母の事例
美人というものは、生まれながらある種の特権階級である。そのために私のような者には想像もつかないくらい容貌に頼って生きている。私の母は大変な美人で、それが彼女のアイデンティティだった。彼女が40歳を過ぎた頃、鏡の中には、もう彼女が見なれていたよういなものを見ることはできなかった。何らかの精神的理由もあって、彼女は急速に醜くなっていった。私はあるとき彼女が鏡という鏡を割ってしまったのを見た。肉体の美しさというものは本当にはかないものだ、40歳から90歳まで、母はただの醜い、意地悪な老婆となって生きた。

4.自己概念のいろいろ
1)ボディ・イメージ
体のかたち
 例 人工肛門をつけた患者
体の機能
 例 片手が上げづらくなった、物覚えがわるくなった、声がでなくなった、などなど
2)社会的な側面の自己概念
「看護師」、「教師」、「企業経営者」
入院患者 元「校長」 過去の自己概念を引きずる
3)内面的な自己概念
 性格についての自己概念 「明るい」、「ドジだ」、「気が小さい」などなど
 道徳的な自己概念 「曲がったことがきらい」
4)ジェンダー・イメージ
 セックス(生物学的性別)≠ジェンダー(社会・文化的性別)
 生物学的には女性だが自分は男性だと思っている人
 生物学的には男性だが自分は女性だと思っている人
 性同一性障害(せいどういつせいしょうがい、英:Gender Identity Disorder, GID)

5.病気による自己概念の変調 
1)ボディ・イメージの変化
   患部から目をそらしていないか=ボディ・イメージの変容を受容できているか
2)社会的役割の遂行の困難
3)ジェンダー・アイデンティティのゆらぎ
4)自尊心のゆらぎ

それへの対応
肯定的な自己像を送り返した事例

6.もと外科教授の患者
まず101頁を読んでください。
なぜもと外科教授は激怒したのかでしょうか。
過去の自分のイメージと現実の自分との落差
肯定的な自己像をお繰り返した看護学生

7.ケース
患者は65歳の大腸がんの女性。75歳の夫と長男夫婦と同居。がん切除の際に、担当医は50%の確率で人工肛門(便を肌門からでなく腹から出るようにするもの)の造設を予定していた。しかし「患者の動揺を避ける」ためと称して、医師は「30%の確率で人工肛門の造設をする」と患者に説明した。手術前によけいな不安を与えないためという理由から看護師も人工肛門について触れることを避けた。当初、造設手術後に人工I門については主治医から説明するとのことだった。しかし手術後になって、「患者は手術後に気づいている」ので、説明する必要はないと主治医は判断し、医師からの説明は結局なされなかった。手術後、1週間目になって看護師に促されて、患者は初めて自分の人工肛門を手鏡で正視した。その時、「これまで人工の何かを体内に埋めていると思っていた」と言って驚き、正視後、突然元気のない表情になった。その後、患部は快復していくのと反対に、精神的動揺と嬬動痛(せんどうつう:消化管壁が食物などの内容物を送る際の痛み)による食欲低下などが見られた。術後9日目の自己洗浄の後、「仕方ないとわかっていても喜べないの」と看護学生に泣きながら訴えていた。

課題
教科書89-105頁を読み返してください。

# by takumi429 | 2020-06-08 18:26 | Comments(1)

医療社会学 第5回

システム理論を導入した看護理論

システムとはなにか?
カタカナ言葉に困ったときには、英英辞典を引こう。
system (Longman Dictionary of Conteemporary English)
1 a group of related parts that work together as a whole for particular purpose
2 an organized set of ideas, methods, way of working
オレムの「看護システム」の「システム」がこれ。
4 someone's body - used when your are talking about its medical or phytsical condition 人体を「システム」と呼ぶことがある。

1と2の定義から
①システムとは全体として働くもの
②何をシステムとみなすかの水準はさまざま
 人体、医療スタッフのような人のグループ、細胞(生存しようとする)、すべてシステム

システム理論の発想
①個々の要素に還元できない全体の性格がある
 例1:有名音楽バンドが解散して尻すぼみのソロ活動
 バンドにはここのメンバーからは説明できない「ケミストリー」(化学反応)があった。
 例2:拒食症の子のいる家族
 個々人には問題がないのに家族集団になると問題をかかえる。
 誰が悪い、のでもなく、誰のせいでもなく、めぐりめぐる因果の病理が拒食症として現れる
②個々の要素に還元できない性格をもつあらゆるものが、「システム」とみなすことができる。
③システム理論のモデル・チェンジ(システム理論の発展・進化)
 1)つり合い(均衡)のシステム理論
  力学的のつり合いをイメージ。
  需要と供給のつり合いによる価格決定
  男女のペア(保守的男性のイメージ)
   私(夫):外で働き家で食べる人 君(妻):家を守り料理を作る人 
   男性アナ:仕切り・コメントする 女性アナ:無知でかわいくふるまう 
 2)恒常性維持のシステム理論
  ①ホメオスタシス
  ②サイバネティクス
 3)自己組織化のシステム理論

ホメオスタシス
 生物の自己維持のはたらき
 例:血糖値の維持 
  血糖値低下→アドレナリン分泌→血糖値の上昇
  血糖値上昇→インシュリン分泌→血糖値の低下
サイバネティクス
 フィードバック(自分のしたことが自分にかえってくること)による自己制御(恒常性持)
 例:エアコン(設定温度の維持)
 室温上昇→冷房の作動→室温低下
 室温低下→暖房の作動→室温上昇

ロイの看護理論
 サイバネティクス理論の導入
 人間=サイバネティクスによるシステム
 適応:外界(環境)にこうして自己の恒常性を維持すること
  人間 生理的自己維持←調節機による適応反応
    心理社会的自己維持←認知機による適応反応

 心理社会的自己はどんな様式で現れるのか
 ①自己概念様式 
   私にとっての私
 ②役割様式
   彼らにとって私
 ③相互依存様式
   あなたにとっての私

病人:生理的のみならず社会心理的レベルでも自己を維持できなくなった人間
看護:病人の自己維持をバックアップする

自己概念については次回で詳しく紹介します。

課題
教科書pp.44-87を読んでください。
とくに家族システム、ロジャーズ看護論については割愛するので、ていねいに読んでください。
質問があったら、私のブログ「社会学しよう!」のコメント欄に書き込むか、次回の講義のあとにしてください。

# by takumi429 | 2020-06-01 19:00 | Comments(0)

医療社会学 第4回

医療社会学 第4回 間奏曲

ヘンダーソンのニードに社会的ニードがとぼしいのはなぜか。

ヘンダーソンの伝記より
看護に群がる「調査屋」、「看護は非科学的」とする
激怒するヘンダーソン

医療社会学
 医療集団を対象として考察
 医療集団の理解をめざす

爆撃機の人間関係が戦果に影響
 
人間関係論
 工場の設備よりもむしろ人間関係が生産に影響
 (ホーソン実験)

医療者
 患者を対象として介入・援助
 患者を理解したい

患者
 病気をかかえた人間
 患者理解とは人間一般の理解を基礎・前提とする

社会学とは
心情と思想をもつ人間一人ひとりが織りなす関係として集団や社会をとらえようとする学問
まとまりをまとまりとして考察するのでなく、
個々人の心理に分解するのでもなく、
個と集団を往復しながら考察する。

看護がもとめる社会学とは
 医療社会学ではなく社会学一般

看護診断
 患者の疾患を診断するのではなく
 病気となった人間(患者)がいかなる問題をかかえているのか、を診断
 知識不足・不安などなど

看護診断に導入されている社会学・社会心理学の概念
 とくに医学を薄めたような教育では習得しづらいもの
 役割理論・自己概念・ノンバーバルコミュニケーション・コーピングなど
 「間奏曲」およびベナー理論で解説。

役割理論
 人びとが各々役割を演ずることで社会というドラマは進行していく
 診察という舞台
  医師・患者・看護婦 
 教室という舞台
  教師と学生

 役割にはそれに対する「役割期待」がある
 
病人役割
 権利①休んでいい
   ②治療してもらえる 
 義務①早く良くなる
   ②医師に治療を受ける

課題
1)教科書のpp.17-21,33-45を読んでください。
2)私の書評を読んでみてください。
http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=4545

# by takumi429 | 2020-05-25 16:34 | Comments(0)

医療社会学 第3回

セルフケアの看護理論

(1)ヘンダーソンの看護理論
人間:ニード(欲求)をもつ存在

ニード(need) とウオント(want)
 ニード:欠けてはいきていけないもの
 ウオント:欲しいもの

マーケティング
ニードの充足を求める客のウオント(ほしい)を喚起する
例:エスカレーター
  レジ近くの小物の陳列

マズロー心理学
人間はニードの層からできたピラミッド
一番基礎的なニードから上位のニードへ
①生理的ニード
②安全のニード
③所属と愛情のニード
④自尊のニード
⑤自己実現のニード
より基礎的なニードが満たされないと上位のニードの充足は後回しになる

ヘンダーソンの14の基本的ニード
教科書p.16表2-1


1正常な呼吸
2飲食
3排泄
4移動と体位の保持
5睡眠と休息
6脱衣と着衣
7体温の保持
8清潔な皮膚
①生理的ニード に対応

9危険忌避
②安全のニードに対応

10コミュニケーション
11宗教
③所属と愛情のニードに対応か

12仕事
④自尊のニードに対応か

13遊び
14学習
⑤自己実現のニードに対応か

生理的ニードの重視
ナイチンゲールの『看護覚え書』の内容に対応
(P.14下から5行)

(2)オレムの看護理論
基礎アイディア
①人間は自分で自分の世話をする(セルフケアする)存在
②ケガや疾患で自分のせわができなくなったのが病人(患者)
③その自分ではできなくなったケアの代わりをするのが看護

ヘンダーソンの基本的ニードとオレムの普遍的セルフ要件
対応表 教科書p.25表3-1
「セルフケア要件」=ニード

ヘンダーソン ニードは人それぞれ、時々で変化する
オレムの術語化
発達的セルフケア要件
健康逸脱に対するセルフケア要件

看護システム
セルフケアの重視
患者がどこまでセルフケアできるか
①患者がほとんどセルフケアできない
→全対償システム
②患者が部分的にセルフケアできる
→部分対償システム
③患者がほとんどセルフケアできる
→支持教育システム

課題
1)教科書pp.11-32 をよんでください。
2)次のインターネット告知を読んでください。
PCR検査の特性と限界 | 公益社団法人神奈川県医師会
https://kanagawa-med.or.jp/corona_news/pcr%e6%a4%9c%e6%9f%bb%e3%81%ae%e7%89%b9%e6%80%a7%e3%81%a8%e9%99%90%e7%95%8c/


# by takumi429 | 2020-05-18 13:56 | Comments(0)

医療社会学 第2回


ナイチンゲールの看護論から

1西洋近代医学の考え方
 特定病因論
  生物医学
   病気Aにはその原因aがある。
   A←a B←b
  公衆衛生学
   臭覚革命1760-1840年 
   「臭いは危ない」→「瘴気説」 
   上水道の整備・都市再開発
  細菌学の勝利
   殺菌優先 インフラ整備は後回し
 比較対照の事例:台湾と石垣島(距離約300キロ)
  台湾 日清戦争後獲得
  「マラリアとギャングの島」
  後藤新平(元名古屋病院院長)らによる徹底的なインフラ整備
   →マラリアの駆除
   近代的な都市の島に
  石垣島
   終戦直前の奥地への避難命令→マラリアのまん延(「戦争マラリア」)
   米軍DDT(白い殺虫薬)によるマラリア蚊の駆除→マラリア撲滅
   南洋の夢の島のまま

 細菌学の勝利は本当か? 
  教科書5頁図1-1医学の進歩と死亡率の低下

2ナイチンゲールの看護論 
  公衆衛生学の影響をうけたナイチンゲール(統計学者としても一流)
   https://www.sciencemuseum.org.uk/objects-and-stories/florence-nightingale-pioneer-statistician
  医師とはちがう発想で患者に接する 
   「治してやる」ではなく「治っていく」のを手助けする
   ナイチンゲール:「病気とは回復過程である」
    患者:回復に自ら向かう能動的な人間

3看護理論における展開
 『看護覚え書』「補章」
「看護婦が学ぶべきAは、病気の人間とはどういう存在であるかを知ることである。
Bは、病気の人間にたいしてどのように行動すべきかを知ることである。
Cは、人の患者は病気の人間であって動物でないということをわきまえるべきである」
1)C:人間は何か。
2)A:病気の人間とは何か。どうなったら人間は病気の人間になるのか。
3)B:病気の人間の看護はどう働きかけるべきか。すなわち看護とは何か。


課題

教科書 2-12頁を読んでください。
Google Scholar で
Nightingale statistics を検索してみてください。
Google 翻訳などを使って、
どんな論文があるのか、見てみてください。


# by takumi429 | 2020-05-11 18:24 | Comments(0)

医療社会学講義 第1回

医療社会学 第1回 イントロダクション


初めまして講師の勝又です.

今日から15回にわたって医療社会学の授業を行いたいと思います。


講義の内容

しかし実はこの授業ではいわゆる一般の「医療社会学」の授業は行いません。

むしろ看護理論の解説を社会学者の観点から行うという授業をするつもりです。

なぜ 医療社会学の授業をしないかと言いますと実は医療社会学というのは医療者という集団を考察する社会学です。それに対して医学とか看護学はあくまでも患者に対してどのような介入とか手助けをするか援助をするかということを問題にしている学問です。ですからこの学問はその対象が異なっているわけです。医療社会学で医療従事者についての社会学的考察をどんなにされても実はあまり医療関係者は面白い関心が持てるとは思えません。医療関係者はあくまでも患者に対して何とかしたいようかしたいと思っているわけですから、むしろ患者をどのようにいかによく理解するかそれが重要なわけです。ですからここでの授業はむしろそうした患者をよく理解しいかに手助けするかということのに役立つ社会学を講義したいと思っているわけです 。


教科書

この講義では私が執筆した『はじめての看護理論』という医学書院から出版した方を使います。この本はこの大学で私が講義してきたものをそのまままとめたものです 。

この本の内容は様々な看護理論がどのような理論を導入し色を体系化していったかを解説したものです。それと同時に看護が取り入れている社会学社会心理学の概念についても説明しています。

看護理論を看護婦でもない看護師でもない私が解説するというのは少し奇妙な感じがするかもしれません。しかし実は看護理論は看護の実体験から理論を汲み上げるというよりもむしろ看護以外の様々な学問から理論を導入して体系を作り上げているという傾向があります。そしてここに導入されている理論はシステム理論とか心理学とか臨床心理学とか精神分析学それから現象学さらに存在論などの様々な理論や思想が導入されています。そして実はこれら導入されているが実は社会学で導入されているのと全く同じなのです。私自身も社会学と様々な諸理論を学ぶためにそれらを社会学以外から導入されたいろんな理論を勉強してきました。そして実はその理論がフェミニズム理論とか看護理論において全く同じ議論が導入されていることにきづきました。ですから私が学んできた様々な理論を解説することで看護理論を学ぶ人にとっても大変役に立つのではないかと思ったわけです 。

看護理論の発達において看護の内部から理論を組み上げていくということがなくむしろ外来の理論を利用してるということがあまり良い事じゃないように思う人もいるかもしれませんが、実は学問においてその学問の発達というのは実はそれ以外の領域から影響を受けて発達する発展するということはとても多いことなのです。

20世紀の初頭、最も発達していたのは物理学でした。その影響を受けて化学が量子力学を使って発展することになり、さらに生物学はその発展した化学の知識を使って DNA の分析などをしていきました。最近で言えば利根川さんというノーベル医学賞を取った研究者がいますが。実は彼の出身は京都大学の化学です。彼は化学的な分析能力があるからこそ生物学生物医学の研究がよくできたのです。他の学問の神かが他の学問に影響を与えてそれをさらに進化させるということはよくあることです。から決して外来の理論を導入してるということを恥じる必要はありませんむしろ外来の色を使ったでも自分たちが看護してしている患者に手助けする、患者の回復を手助けする、という目的をより一層理解しより一層充実させるという事の方が重要なのです。

また看護の世界では「看護診断」という方法がよく用いられています。これは医者が「医学診断」を患者にするのと同じように、看護の観点から患者の抱えてる問題を診断しようとするそういう考え方です。この看護診断においては実に様々な領域から様々な理論や概念が導入されています。です から看護診断を理解するためには看護以外から導入されているという例えば社会心理学とか社会学の理論や概念も理解しなくてはいけません。この講義の受けはそうした看護診断に導入されている社会学社会心理学の概念を説明したいと思います 。


講義の方法

さて講義の方法ですがしばらくはひとまずこのブログ上ので講義をし、同時にブログ上に課題を提示しておきますのでそれを皆さんにやってもらうという形にしたいと思います。質問等はこのブログ「社会学しよう!」のコメント欄に書いていただき、それをこのブログ上で答えていきたいと思います


最近の新型コロナウイルス感染の報道から

さて最近の新型コロナウイルス感染の拡大によりこの講義にもこうした変則的な形をとることになったのですが、この動向から極めて印象深いことがことはあります。

(1)1つは言うまでもなく医療制度の重要性ということであります。

(2)2つ目は医療制度の中で働いている医療従事者看護師医師またその他の病院の人とか保健師の方々そうした人々の献身的な努力です。

(3)そして3番目に極めて重要でありながらまたまた私たちは欠けているのだと思わされることが「統計リテラシー」とでも言うべき、統計学的なものの見方とかグラフやデータをを読み取っていく力というものの必要性、および、その力が欠けているということが強く印象づけられます。

実はこの三つの問題の交差するところに実は近代看護学の祖であるナイチンゲールが位置しています。1と2は、何よりが看護制度の始まりを起こしたわけですから当然かと思いますが、3の統計学というのは意外に思うかもしれませんが、実はナイチンゲールという人は当時最高の統計学者でした。患者に対して優しい気持ちで接するということは重要だがそれを見るときに実はクールな統計学的な観点からも見る。温かい心ウォームハートと冷静な頭脳クールヘッドで接するというその両面が必要なわけですが、まさに彼女の看護の背景には統計学の高い知識があったのです。


最近の新型コロナウイルス感染対策についての様々なコメントを見ていると、とにかく検査を実施すべきだ、希望する人にすべて検査をすべきだ、というような議論がよくあります。まるで検査をすることが即、治療であるかのような言説が大変飛び交っています。

他方、「医療崩壊」という極めて煽情的な言葉遣いが横行し、その具体的な内容が十分に議論されていないということがあります。医療崩壊などという曖昧で扇情的な言葉を使うよりももっと重要なのは、医師や看護師などの人的資源リソースや人工呼吸器などの物的資源が欠如してくるという問題とそれが引き起こすところの院内感染という事態が具体的にもっと議論されるべきでしょう。

もし全ての人に検査を行い検査で陽性になった人を即入院させて言ってしまったら、実は偽陽性検査で感染していないのに陽性と判定された人間が大量に病院の中に入ってきます。その結果医療施設の能力を超えてしまい同時にそこで膨大な院内感染が起きる可能性が生まれます。もともと感染していなかった人が入院することで新型ウイルスに感染してしまい結果亡くなる。亡くなった原因は確かに新型コロナウイルスである。しかし実はその患者が感染したのは一般生活ではなくて入院してからだったということもあり得るわけです。

かんたんな確率の計算をしてみましょう。

検査の精度が次のようだとしよう。


陽 性

陰 性

罹 患

99 %

1 %

非 罹 患

2 %

98 %

仮に全国民の0.01 % が罹患しているとしよう(日本なら約12,595人)。

その時、この検査で「陽性」と判定された人のうち、本当に罹患している人は何パーセントでしょうか。

99 %」と答えたくなります。だがちょっと待ってほしい。「陽性」と判定された人の中には、本当は罹患していないのに「陽性」と判定された人も入ってきてしまっています。


では「陽性」の判定が出た人のうち、本当に罹患(感染している)人は何パーセントでしょうか?


 ここで確率の樹形図を描いてみましょう。


医療社会学講義 第1回_c0046749_12045384.gif


陽性判定者は、感染していて陽性判定の人(0.0001×0.99)と、感染していないのに陽性判定の人(0.9999×0.02)の両方。その中で、本当に感染している人は0.0001×0.99。その確率は (0.0001×0.99) ÷{(0.0001×0.99)+(0.9999×0.02)}≒0.004975 (約0.5%)


「陽性」反応がでた人で本当に感染している人はわずか0.5%です。陽性反応がでたからといって入院させていると入院先で感染する危険が大です(ひっとしたらこれがイタリアやスペインで起きていることかもしれません)。

(もし国民の1%が罹患していている場合(日本なら1,259,500人)でも、計算すると陽性判定の人が本当に罹患している確率は1/3にすぎません)。


この例は検査の精度が極めて高い場合です。それでも、もし検査の対象者を絞り込みをしないで検査すると、陽性反応が出た人が感染している確率は、極めて低いということが言えるわけです 。


むやみな検査は、実は感染していない人を、感染がまん延している施設に送り込み感染させる、ということになりかねないわけです。


そこで皆さんには次の課題をやってみてください。


課題

次の2本のYoutube動画をみて、「統計リテラシー」の重要さを学んでください。


むやみな検査を行ってはいけない理由、数学的に説明します【条件付き確率】

https://www.youtube.com/watch?v=67FGN9RKmqw


【大学数学】ベイズの定理【確率統計】

https://www.youtube.com/watch?v=oUN_GhB00fU&t=405s


統計学の知識は極めて医療において重要であるということを私も実感しています。確率・統計学の勉強はもちろん大学でもできますが、Youtubeにも大変優れた動画がいくつかあります。私がわかりやすいなと思うサイトは次のサイトです。


統計の基礎 2016年度

https://www.youtube.com/channel/UC7OvAtl0NzRDCfiblHwXFRw/feed

予備校のノリで学ぶ大学の「数学・物理」

https://yobinori.jp/video/probability-statistics.html


おすすめ本

著者はスエーデンの公衆衛生学者(臨床医としての実務経験あり)です。

まさに「目からうろこ」、感動的な本です。

ハンス・ロスリング著『ファクトフルネス』日経BP社


中田敦彦による紹介

https://www.youtube.com/watch?v=zGKLgcTn7YY

https://www.youtube.com/watch?v=3L-JFZraI_I


予告

では次回から様々な看護理論を学んでいきたいと思います。

もし、予習してみたいと思う人は、私が雑誌『プチ・ナース』の連載した解説をアップしてあるので、よかったら読んでみてください。

https://shakaigaku.exblog.jp/i16/




https://docs.google.com/document/d/e/2PACX-1vR8KhqctqgiPslxGSQn0nVUtJWVNK9mhmAu3eYoiy0mP6g0DjbX41bMxLfBuOTqYO8GZF63FI3j_4uI/pub






# by takumi429 | 2020-04-22 12:06 | 看護理論 | Comments(0)

プロフィール

勝又正直
昭和31年4月29日生まれ
名古屋大学文学部哲学科社会学専攻卒
東京大学総合文化研究科修士課程修了
情報科学芸術大学院大学[IAMAS]修士課程修了
現在 名古屋市立大学看護学部教授

このブログの内容の著作権はすべて私にあります。

なお、「近代とはなにか」「社会学史」「社会学入門」のコンテンツをまとめ、
『近代とは何か 社会学からの考察』としてKindle出版の予定です。
それにともない、この本のもとのなった記事は非公開にいたしましたので、
引き続き内容をご覧になりたい方は、
Kindle出版の『近代とはなにか 社会学からの考察」を
ご購入いただけますようお願いします。


# by takumi429 | 2020-01-22 10:19 | プロフィール | Comments(0)