人気ブログランキング | 話題のタグを見る

3.病気だという自覚(病識)

「さあ、治療だ」と勢い込んでいても、かんじんの病人が「自分は病気だ」と思ってくれなくては何もはじまりません(第一、そう思わなければ、病院にもクリニックにも、そもそも薬局にも来てくれません)。「自分は病気なんだ」と人が思うことを「病気の認識」(病識)といいます。
人が「自分は病気だ」と思う時には、同時に次のことを考えています。①「・・病」という病気なんだ(同定)、②これは・・・のせいでなったんだ(原因)、③これは長引く、または、すぐ治る(時間軸)、④この病気のせいでどういうことになるのか(結果)、⑤どうやったら治る(おさまる)のか(治癒・コントロール)。
つぎに、病気という問題の解決は、(1)解釈:自分の症状を病気と解釈する、(2)対処:この病気に対処する、(3)評価:治ったかどうか判断して、治ってなければ治療を継続したり変えてみたりする、という三つの段階を経ることになるでしょう。
(1)解釈と(2)対処についてさらに見てみましょう。
(1)解釈、つまり自分は病気だという解釈は、そのひとが、①どんな気分でいるのか(ムード)、②体のことにどう敏感になっているか(認知)、③どんな病気を重視する文化に属しているのか(環境)によってちがってきます。
また、(2)病気への対処(コーピング)には次の三つからなっています。
まず①自分は病気なのだという評価を下す。つぎに、②そのためにしなくてはいけないことをする、これには、病気関連のこと(病状の対処・治療から生じることの対処・医療者と関係をとり維持すること)と、一般的なこと(気持ちの維持、・自分というものを失わないこと、家族や友人との関係を維持、将来への準備)とがあります。そしてまた、③対処の技術。これには三つの方向があります。すなわち、病気の評価する・病気という問題を解決する・気持ちをなんとかする、の三つです。
べつの言い方をするならば、人は、病気という重大で深刻な事態のなかで、(1)どうしてこんなことになってしまったんだろうと考え(意味を求め)、つぎに(2)どうやったらこれを治めることができるかを考え、そうやって(3)より強い自分というものを獲得していくことで、立ち直っていくのです。
by takumi429 | 2009-04-04 04:26 | 健康心理学
<< 看護に学ぶ臨床社会学 2.健康信念 >>