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4章 医療者と患者とコミュニケーション

患者が医者の指示に従うことを「コンプライアンス」と言います。コンプライアンスが向上するためには、患者が医者の説明や指示を(1)納得(理解)して(2)満足し、さらに(3)ちゃんと後まで覚えていること(記憶)が大切です。(2)とくに医師が患者の気持ちに配慮を示さなかったり、どうすればいいのかちゃんと適切に指示してくれなかったり、病気について十分な情報を与えてくれなかったりして、患者に不満が残ると、コンプライアンスは低下します。
しかし、コンプライアンス(患者が医者の言うことを聞くこと)というと、患者はまるで無知で、絶対の真理をにぎった医師の言うことを聞くべきだ、という感じがします。そのわりには同じ病気なのに、かかった医者によってずいぶん違うことを言うなあ、という経験をした人も多いのではないでしょうか。
医師は診断をする時、まず症状をみて、「これは○○病か××病じゃないだろうか」というふうに仮説を立てます。そのうえで、それが正しいか間違っているかを調べていって診断を下します。じつはこの仮説を立てるときに、医師それぞれがもつ思いこみ(信念)が影響します。しかもいったん「□□病じゃないか」と考えるとそれに都合のよいデーターは重視するけど、都合の悪いデーターは軽視するという傾向があるのです。
こうしてみると、圧倒的な知識量と権限の差があるとはいえ、医師と患者は、さまざまな信念(思いこみ)を抱え込みながら、病気に対する適切な行動を話し合いながら一緒に模索しているのだといえるでしょう。しかも慢性疾患や成人病などの場合、実際に行動するのは圧倒的に患者の方です。であるならば、患者が不満をもつことなく、納得して行動できるように、病気に関して十分な情報が与えられるべきでしょう。「ガン告知をしたらショック死した高僧がいた」なんていう根拠のない伝説による思いこみ(信念)で、患者に十分な情報を与えないことを正当化する、なんてことが、もはやあってはならないのです。
by takumi429 | 2009-05-31 07:08 | 健康心理学
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