レーニンガー看護理論

京都の夏の風物詩に「五山の送り火」があります。京都以外の土地の人はこれを「大文字焼き」と呼びますが、京都の人はけっしてそう言いません。大の字の形に火を付けるわけですから、京都以外の人たちには「大文字焼き」でもいいように思えますが、京都の人たちにとっては、この火はあくまでもお盆に帰ってきた祖先の霊をあの世に送り返す「送り火」であって、それを5つの山に順番につけていくのです。外から見たら、「大文字焼き」に見えるものでも、京都文化の中から見たら、あくまでも「送り火」であって、「送り火」であることを理解してはじめて、死者の霊に対する京都人の持つ畏敬の念というものが見えてきます。
このように文化の外から見るのと、文化の内側から見るのとでは、立場によって、ものごとは異なって現れてきます。病気もそうしたものの典型です。西洋医学から見ると、ウイルス感染による「非特異的上気道炎」であるものが、日本の文化では冷たい風に当たったための「風邪」とされます。またストレスによる筋肉痛は「肩こり」とされます。
医療人類学では西洋医学からみた病気を「疾患」(disease) と呼び、その文化から見た病気を「病い」(illness)と呼びます。人間はその文化のなかで生きている存在ですから、病気の時も、その文化のなかで病んでいます。つまり私たちは「非特異的上気道炎」ではなくあくまでも「風邪」をひいているです。こうした病いについての文化を理解し、その文化の内側から病気というものがどのように現れているかを知らなくては、適切な治療・ケアはできません。例えば、「肩こり」の患者に「心療科へ行け」と言っても行かないでしょうし、「風邪」には注射や薬が一番と思っている患者に、ただ「安静にするように」と言っても納得はしないでしょう。
医療人類学の影響を受けたレイニンガーは、人間がその文化の中で病む、ということを理解したうえで、その文化を理解しそれに即したケア(文化ケア)をしようと提案しているのです。

参考文献:勝又正直 著『はじめての看護理論』医学書院
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by takumi429 | 2009-01-06 16:36 | 看護理論 | Comments(0)
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