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オレムの看護理論

フランスには、「代名動詞」という、変わった動詞の使い方があります。ドイツ語では「起きる」という代わりに、「自分を起こす」と言わなければなりません。同様に、「服を着る」は「自分に服を着せる」、「休む」は「自分を休ませる」、「寝る」は「自分を寝かせる」となります。日本人にはめんどうな言い回しなのですが、なぜか身の回りのことをいうときには、この代名動詞を使うことがとても多いのです。でもよく考えてみると、私たちは自分の身の回りのことは、自分で自分の面倒をみている(世話をしている)わけですから、それも当然といえるかもしれません。
オレムの看護理論の中心となる考え方「セルフケア」というのも、この「自分で自分の世話をする」ということにほかなりません。しかし、病気やけがで自分の世話を自分ではできなくなったときにはどうするのでしょうか、そのとき世話をしたり手助けしたりするのが看護だ、というわけです。
ですが、病気やけがの程度によっては、その世話のありかた(看護のシステム)もちがってきます。オレムはこれを3つにわけました。
①患者がほとんど何も自分の琴ができないときに、全面的にそのセルフケアを代わってあげること(全代償システム)
②患者が部分的に自分のことができるとき、部分的に手伝ってあげること(部分代償システム)
③患者がほとんど自分のことができるとき、そのセルフケアをより良く正しいものになるように指導・教育すること(支持教育システム)
自分で自分の世話をしなくてはいけないこと(セルフケア要件)というのは、要するに「ニード」にほかなりません。オレムは、セルフケアという考え方をつかって、ヘンダーソンのニード論をとりこんで自分の看護論を展開したのです。
オレムによれば、看護は患者のセルフケア能力の回復を妨げず、うながすべきもの、ということになります。つまり、寝たきりを促進するような「看護」はほんらいの看護ではない、ということになります。
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参考文献:勝又正直 著 『はじめての看護理論』 医学書院

by takumi429 | 2009-01-05 18:08 | 看護理論
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