4.ミザンセーヌmise en scéne 演出

4.ミザンセーヌmise en scéne 演出

『ゴッド・ファーザー』 
2つの結婚式 
コニーの結婚式 : 豪華であり多くの参加者、同時にビジネスの場でもある。
マイケルの結婚式: わずかな家族員だけの質素で宗教的。
ビジネスと家族の葛藤:作品の大きなテーマ
監督コッポラは、セットと俳優の演出によってこの対比を生み出している。

ミザンセーヌ(シーンに置く、アクションをステージにのせる、の意味)
一般的に映画界においては「カメラに映るすべてのもの」を意味する。つまり、セット(装置)、俳優、衣装、小道具、照明、、といったものである。またセットにおける俳優の位置や動き、「ブロッキング」と呼ばれるものも含まれる。(ほぼWikipediaの定義のまま)

セット:アクション(動作)が行われる場所。野外の場合もあれば、人工的につくられた防音スタジオの場合もある。セットはデジタル技術で修正されることもある。
セットの空間的な特質は、しばしば登場人物とその葛藤を展開させ、テーマを示唆することで、映画に意味をあたえる。

強制的遠近法Forced perspective
遠くの物は近くの物より小さく見える、ことを利用した、一種のだまし絵的な技術。たとえば、わざと奥に小さい物を置くことで、実際より奥行きがあるように思わせるたりすること。
例:東京神宮外苑の聖徳記念絵画館前の銀杏並木、岐阜県立美術館の庭園、京都の無隣庵の庭園

『天井桟敷の人々』(1945) http://www.youtube.com/watch?v=Ff1Bxvrbgrk
19世紀のパリの犯罪通りの再現セット。遠くにある物をより小さくすることで奥行きがあるように見せている。

場所のモニュメント(記念建造物)を盛り込むことで、その場所での出来事であると思わせる。 
『猿の惑星』のラスト・シーンhttp://www.youtube.com/watch?v=muEnLlycOn4&feature=related
:自由の女神があることで猿の惑星がじつは地球のなれの果てだったことが明かされる。
『ブレード・ランナー』(1982) 近未来のロサンジェルスの町並み。
実際にはそこで撮影する必要はない。
『地獄の黙示録』http://www.youtube.com/watch?v=IHUSmOQnzEk
ベトナム戦争を扱っているが撮影はフィリピン。
Computer-generated imagery(CGI)を使ってセットをつくる場合もある。
ティム・バートン『アリス・イン・ワンダーランド』(2010) http://www.youtube.com/watch?v=tkssu2ksM1k

セットについて書く:視覚的・空間的特質
セットの視覚的特徴が観客からの反応を喚起する。
明るく広がる屋外のシーンは無限の可能性を感じさせる。
例:『アイガー北壁』(予告編http://www.youtube.com/watch?v=xbbXWyI2AqE)
暗く窮屈な内装はワナにはめられることを言外に意味する。
例:『メメント』http://www.youtube.com/watch?v=91QGubnDHSs
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88_(%E6%98%A0%E7%94%BB)
文脈としてのセットの使い方は演出を解釈する上で重要である。
例:『カポティ』の冒頭。
平凡な、あるいは、恐ろしい、もしくはその両方の、カンザスの田舎の風景。NYとの対比。http://www.youtube.com/watch?v=Q4BvvJ69pIQ

監督やロケハン担当者はその視覚的・空間的な特徴から場所を選ぶ。
その特質は文化的意味だけでなく情緒的な言外の意味も伝える。
『インテリア』(1978)の立派だがうつろな海岸の家は物質的な豊かさと精神的な疎遠さを映し出す。
『リストラ・マン』の特徴のないアパートは主人公たちの単調で過酷な仕事と生活を映し出す。

セットの機能
セットの第一の機能は時間と空間を確立して、アイディアとテーマの導入をし、ムードをつくること。

『エイジ・オブ・イノセンス』(1993) 1870年代のニューヨーク
http://www.youtube.com/watch?v=K0bENHsyGPg

ジャンルによっては特定のセットと場所につながっている。例:ウエスタン

監督にはよって、わざと観客の期待に逆らってセットを選ぶこともある。
例:ミュージカルはふつうは劇場のようなセットをえらぶが、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』や『リトル・ダンサー』はちがうセッティングにしている。

ムルナウの『サンライズ』(Sunrise: A Song of Two Humans)http://www.youtube.com/watch?v=pG03b0_R4JE&feature=related

人物
俳優の動きは映画の意味を大きく左右する。

キャスト
俳優選びは監督のできる重要な決定。
ふつうはオーディションで選ぶが、「Aリスト」の俳優はオーディションでなく話し合いで決まる。

同じフィルムで異なるセット:『フル・メタル・ジャケット』新兵訓練所・ベトナムの戦場
同じセットで異なる映画:海岸『ピアノ・レッスン』・『Bhaji on the Beach』

商業的な理由から、配役が限定されることがある。
典型的配役typecasting(同じ種類の役をいつも同じ俳優に配役する)はスターやスタジオにとってありがたい。

時々、それまでのイメージを裏切る役をする俳優もいる。

演技スタイル
無声映画の時代は大げさな身振りの演技。
トーキー以後は抑え目の演技

Barry Kingの演技スタイルの分類
・Impersonation 没入的演技:役になりきる
・Personification スター的演技:スターでありつづけて演じる
・technical acting 技術的演技:アクセントや身体的特徴まで変えて自在に演じる。
  例:『博士の異常な愛情』http://www.youtube.com/watch?v=MqBIOfZC-I4
    のピーター・セラーズ

ハリウッド・スタジオ・システム(制作・配給・俳優を1つのスタジオがおさえる)時代
 スター的な演技が支配的。
スタジオ・システムがこわれはじめてヨーロッパ映画の影響を受けだすと
 メソッド演技 ロシアの演劇理論家コンスタンチン・スタニスラフスキーの心理リアリズムにもとづき、ニューヨークにリー・ストラスバーグが1947につくったアクターズ・スタジオの展開された演技法。自分の感情を増幅して役になりきる演技法。没入的演技法。

『L.A.コンフィデンシャル』
http://www.youtube.com/watch?v=5nnFof4KpKY
大酒のみのラッセル・クロウが6ヶ月禁酒。

『マシニスト』http://www.youtube.com/watch?v=ZGTRl4SkWvI
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クリスチャン・ベイルは役作りのために約30kg体重を落として、その4ヶ月後にまた32kg増やして『バットマン・ビギンズ』http://www.youtube.com/watch?v=vak9ZLfhGnQでバット・マン役をする。
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ヒース・レジャー
『ブロークバック・マウンテン』http://www.youtube.com/watch?v=57inv_1LTI8
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『ダーク・ナイト』http://www.youtube.com/watch?v=nN8KOKHNp08
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役に入り込みすぎて、眠れなくなり、睡眠薬の過剰摂取で死亡。
「メソッド俳優の死」として報じられる。


ブレヒト流演技:観客との距離をとる

ブレヒト(Bert(olt) Brecht1898―1956)は「異化」について、「『三文オペラ』のための註」のなかでこう述べている。
「『三文オペラ』は、その表現する内容ばかりかその表現方法の点でも、市民的な物の考え方と密接に結びついている。それは劇場の観客がこの人生について見たいとのぞんでいるもののについての一種の講演である。だが同時に観客は、自分の見たくないものをもいくらか見せられる。つまり、自分の希望が実現されるのを見るだけではなく、それが批判されるのをも見る。(自分を主体としてだけでなく、客体としても見るのだ。)したがって、原則的には、演劇にある新しい機能を与えるようになる。」(『三文オペラ』165頁)
 さらにその演劇論のなかでこう述べている。
「もはや観客は、自分の世界から芸術の世界へと誘い込まれるのではなく、むしろ反対に目さめた感覚をもって自分の現実的な世界に連れていかれねばならない。・・・その原理は感情同化のかわり異化を導き入れることである。
 異化とはなにか?
 ある出来事ないし性格を異化するというのは、簡単にいって、まずその出来事ないしは性格から当然なもの、既知のもの、明白なものを取り去って、それに対する驚きや好奇心をつくりだすことである。・・・異化するというのは、だから、歴史化することであり、つまり諸々の出来事や人物を、歴史的なものとして、移り変わるものとして表現することである。・・・劇場はもはや観客を酔っぱらわせたり、さまざまな錯覚を授けたり、この世界を忘れさせたり、自分の運命と妥協させたりしようとしない。これからは劇場はこの世界を、観客がそれに手を加えることができるような形で、観客に提供するのだ。」
(『今日の世界は演劇によって再現できるか---ブレヒト演劇論集---』123-4頁)

役者が役に命を吹き込み、観客にそういう登場人物がいると信じさせることは、観客を映画に巻き込むために欠かせないものと思われている。しかしこうしたリアリズムとは正反対の立場が、ドイツの演劇家のブレヒトの提唱した「異化」である。これは、観客が役に同化して感激するのを良しとしないで、むしろ観客がその役に違和感をもつことで、知的な反応(階級的な社会状況への認識)を引き出そうとする。

ブレヒト流演技法の影響例:『マルホランド・ドライブ』http://www.youtube.com/watch?v=F3FH_v3X3Xo
http://www.youtube.com/watch?v=R8i5CyDmWqk
役者の演技は意図的に不透明http://www.torrentbox.com/torrent_details?id=1614545


役者の肉体 人物配置
前面に位置する人物:重要人物。
監督は人物の配置に細心の注意をはらう。
『市民ケーン』の人物配置


俳優の肉体:服装と小物
服装は時代と場所の情報を提供するが、それ以上に重要なのは、社会環境と個人的なスタイルを表現すること。
『サンセット大通り』(1950)
予告編http://www.youtube.com/watch?v=6j8JXbV7JWI&feature=fvst
オープンニングhttp://www.youtube.com/watch?v=nQNh_m3YIBc&feature=related
ラストシーンhttp://www.youtube.com/watch?v=SA9lFsiut2Q

売れない脚本家が往年の大女優の情夫となり、分不相応なスーツを仕立てる。
新しい衣服は、大女優への依存と彼の人生が自分の思いのままにならなくなったことの象徴。

衣装と同じく、小物も、登場人物の性格を表したり、その変化・展開を示唆することができる。
『自転車泥棒』(1948)
http://www.youtube.com/watch?v=H_DbxqbMOAg&feature=fvst
http://www.youtube.com/watch?v=FZm7WuIVPtM&feature=endscreen&NR=1
自転車は、単に移動機関にとどまらず、戦後のイタリアの人々が直面した絶望的な状況のシンボル。自転車を盗まれることで失業し、自転車を盗もうとして見つかり、子供の前で小突かれ殴られ涙ぐむ父親。
The Station Agent(2003)
懐中時計 主人公の生真面目さと閉じこもった生活

俳優の肉体:メーキャップ
メーキャップや髪型は時代を特定するだけでなく、人物の性格やその変化を表す。
prostheses人工装具(俳優の顔や体につける3次元のメーキャップ)
『めぐりあう時間たち』(2002) 
ヴァージニア・ウルフを演ずるニコール・キッドマンの付け鼻
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ニコール・キッドマン
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ヴェージニア・ウルフ


メーキャップと小物は、コミカルな、あるいはぎょっとするような効果をもたらすことができる。
『オースチン・パワー』でのマイク・メイヤーはメーキャップ、小物、髪型、人工装具で、
パワーズ、ドクター・イヴィル、ファット・バスタードを演じている。
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モーフィングmorphing ある映像を次第に別の映像に変えるコンピューターによる映像処理技術

例:『マスク』The Mask(1994) http://www.youtube.com/watch?v=sRUvbeP_vCo&feature=fvwrel


Lon Chaney 「千の顔をもつ男」
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『ノートルダムのせむし男』
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『オペラ座の怪人』
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The Unkown
メーキャップだけでなく、身体そのものを多様に変形・操作して、さまざまな役を演じた。

照明
三要素:質(強い/ソフト)・配置(光の当たる角度)・コントラスト(強い/弱い)

強い光
ソフトな光
自然光
「マジック・アワー」(日の出の直前、日没直後)の拡散した光
『天国の日々』はマジック・アワーに撮られた。

三点照明
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ハイ・キー照明(High-Key lighting):keyライトとfillライトの比が2:1以下。
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ナチュラル・キー照明(Natural-key lighting):key-light/fill-light 4:1~8:1
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ロー・キー照明(Low-key lighting):key-light/fill-light 16:1~32:1
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配置
バランスと左右対称
古典的ハリウッドフィルムでは、主人公を中心にした左右対称の配置が好まれた。

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Holiday
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『戦場のピアニスト』

対角線
人間の目は、対角線、垂直線、水平線、の順に反応が低くなる。
対角線がもっとも視覚的な重みを持つ。

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『理由なき反抗』
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マネ『闘牛士の死』

Loose framing(ゆるい枠)
 開放感・孤独感
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Badland

Tight framing(締まった枠)
 不自由さ・緊密さ
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『赤い砂漠』

『オイル』There will be blood
義理の親子の緊密感から、はてしない石油探しへ
前景・後景

前景にある物は物語で重要なもの。

『汚名』
スパイであることがわかったアリシアを亡き者にしようと毒が入れられたコーヒーカップが前面に置かれ、否応なしに観客はそこに注目する。

光と影
明暗法chiaroscuro

『第三の男』のクライマックス


撮影デザイナーは色調を考える。色によって映画のムードが決まってくるから。
『理由なき反抗』赤:存在の苦痛と性的衝動の混じり合ったものを示す。
『ドウ・ザ・ライト・シング』赤は夏の暑さを強調。
彩度は、色合いの強さと弱さをしめす。
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』鮮やかさのない色合いは主人公の退屈な生活を示している。

ミザンセーヌの二つのアプローチ

ドイツの表現主義 2次元的なフレームづかい
不気味なストーリー、明暗法の照明、対角線、奇妙な人工的セット
例:『カリガリ博士』



フランスの詩的リアリズム 演出とカメラワークの結合 3次元的フレームづかい
人々の複雑な絡み合いを再現する。
カメラの凝った動きを多用する。
『ラング氏の犯罪』の殺人シーンhttp://www.youtube.com/watch?v=syX8_l_DxSo
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by takumi429 | 2012-05-14 10:24 | 映画論 | Comments(0)
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