0.1イコノロジー

図像学
西洋絵画では、絵は言葉であり、かならず、歴史・神話・聖書などの登場人物や物を意味するのが常であった。絵を見たときに、この絵はそうした物語の誰(何)にあたるのかを知らなければその絵の伝えようとすること(メッセージ)は理解できない。またそうした物語の人物や物の描き方にはそれにふさわしい様式があり、その様式を知らなくては、その様式をふまえつつもそれを超えて独自の創意工夫を盛り込もうとした作家の意図もわからない。こうした絵が何の絵であえい、どんなことを意味(象徴)しているのかを、記述・解釈する学問を図像学という。
たとえば、母親と赤ん坊が並んでいる絵があれば、それはほとんどが、聖母マリアと幼子イエス(聖母子像)を意味する。聖母子像には、(1)乳をあたえる聖母、(2)王座に座る聖母、(3)合掌する聖母、(4)書物を持つ聖母、(5)バラ園の聖母、などがあり、またその持ち物もオリーブ(平和の象徴)、星(マントにみられる)、エッサイの木などある(ジェイムズ・ホール『西洋美術解読事典』)。そうした様式をふまえつつ、画家はその独自性を絵に盛り込む。
 エルヴィン・パノフスキー(1892-1968)は、この図像学を、ひとつの文化研究の学に仕立て上げようとする。それが彼のいう「イコノロジー」である。パノフスキーによれば図像の解釈は、3つの段階をもつ。
(1)日常的レベルにおける対象の認識・記述
例:デューラーの作品のなかに、日常的常識にもとづいて「蛇のまつわる樹木をはさんで立つ裸の男女」をみる。
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(2)特定の歴史的・文化的条件の下で成立した図像の意味に分析・解釈。
例:同上の図像を西洋キリスト教世界において成立したものと現的し、旧約聖書の『創世記』のテキストにもとづいて、「アダムとイブ」であることを証する。
(3)図像の本質的意味に対する総合的直感の適用と、それによる文化の普遍的原理の把握。
例:デューラーがこれを制作した当時の文化的諸特徴にもとづき、デューラーの精神の規定を成す世界観を直感し、この作品を文化の普遍的原理の象徴と見る。
(参照・引用『平凡社大百科事典』「図像学」辻成史 著)
参考文献
若桑みどり『絵画を読む イコノロジー入門』NHKブックス
エルヴィン・パノフスキー『イコノロジー研究』(ちくま学芸文庫)
ジェイムズ・ホール『西洋美術解読事典』(河出書房新社)
ミッシェル・フィエ『キリスト教シンボル事典』(クセジュ文庫 白水社)
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by takumi429 | 2012-09-23 19:34 | メディア環境論 | Comments(0)
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