1.序

ヴェーバー宗教社会学講義

1.序
この講義は、ドイツの社会学者、マックス・ヴェーバー(1864-1920)の書いた、『宗教社会学論集』全3巻、を読み解きながら、世界の諸宗教とそれを生み出した社会についての概観を得る、と同時に、西洋近代社会というものがいかなる原理を持つ社会なのか、を解明していこうとするものです。

『宗教社会学論集』の構成
ヴェーバーの『宗教社会学論集』は、以下のような構成をもつ論文集です。

序言
プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神
プロテスタンティズムの教派と資本主義の精神
世界宗教の経済倫理
 序論
 儒教と道教
 中間考察
 ヒンドゥー教と仏教
 古代ユダヤ教
 (付録:パリサイびと)

 この論文集は、キリスト教、儒教、道教、ヒンドゥー教、ジャイナ教、仏教、ユダヤ教の諸宗教を考察するのみならず、中国、インド、東南アジア、中央アジア、極東、中近東、西洋の、社会と歴史を、その自然条件・経済・政治・文化などのさまざまな側面から考察し、かつそれを統一的な社会像として把握しようとするものでした。まさに社会をまるごと把握しようとする野心にみちた論文集であり、その把握の目指すものは、私達を今覆い支配している近代社会というものが何であるのか、という社会学固有の問いに答えようとする作品でした。
 ヴェーバー自身が後世に残そうとして、まとめた(まとめかけた)論文集はこの論文集だけでした。その作品の影響力、その透徹した視野、完成度において、マックス・ヴェーバーの最高傑作というだけではなく、社会学の歴史にそびえる巨大な壁のような古典的作品群であると言えると思います。
 私達は、この論文集がどのように書かれ作られていったのか、作品形成をたどることで、この論文集を貫く、ヴェーバーの問題意識を明らかにしつつ、この論文を読み解いていくことにします。その過程で、彼の教科書的な遺稿である『経済と社会』、とりわけ、その中の『宗教社会学』や、そのほかの論文を、あくまでもこの論文集のとの関わりにおいてではありますが、扱いたいと思います。

『宗教社会学論集』の成り立ち
作品の形成と言いましたが、この『宗教社会学論集』は次の順で書かれました。
まず、
「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」が1905年にヴェーバーが編集する『社会科学並びに社会政策雑誌』に発表されました。
つぎに11年のブランクのあとに、
「世界宗教の経済倫理」の「序論」・「儒教」・「中間考察」が1916年に、同じく『社会科学並びに社会政策雑誌』に発表されました。
ヴェーバーは以上の論文を改訂して『宗教社会学論集第1巻』として1920年に発刊しました。その際、
この『宗教社会学論集』全体の「序言」が新たに書かれ、
また、
「プロテスタンティズムの教派と資本主義の精神」という論文が追加されました。
また、その他の論文も改訂されましたが、とくに「儒教」は大幅に増補改訂されて題名も
「儒教と道教」となりました。
「ヒンドゥー教と仏教」は1916-17年に『社会科学並びに社会政策雑誌』に発表され、
「古代ユダヤ教」は1917-19年に『社会科学並びに社会政策雑誌』に発表されました。
ヴェーバーが1920年に死んだために、この2つの論文は改訂されることなく、そのまま
『宗教社会学論集』の第2巻と第3巻となり1921年に発刊されました。
なお、第3巻には、遺稿であった「パリサイびと」が付録として追加されました。

では、ヴェーバーの最も有名でかつ影響力を持ち、この巨大な論文集の出発点ともなった論文、「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」をさっそく見ていくことにしましょう。
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by takumi429 | 2013-04-14 23:32 | ヴェーバー宗教社会学講義 | Comments(0)
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