尾崎紅葉が書いた明治時代の代表的な小説。 読売新聞に1897年(明治30年)1月1日 - 1902年5月11日まで連載。 作者が逝去したため未完。 前編 15歳で両親に死に別れた、間貫一(はざまかんいち)は、鴫沢(しぎさわ)家に引き取られ育ててもらい、高等中学生(ほぼ自動的に東大生になれる)となる。大学を卒業し学士となったら、鴫沢家の娘、宮、と結婚し、鴫沢家を継ぐとの約束である。 しかし、300円のダイヤモンドの指輪が自慢の大富豪の富山唯継は、かるた会で宮を見染め嫁に求め、鴫沢夫婦も宮もそれを了承する。 鴫沢隆三が宮をあきらめるよう貫一を説得するあいだ、宮と母親は熱海に来ている。そこへ富山がやって来て宮を散歩に誘う。ところがそこへ貫一もやって来たので、富山は東京に帰る(前編第7章)。夜となって熱海の海岸で、貫一は宮をなじり、翻意を乞うが、宮は富山と結婚する気であることを知り、宮を蹴飛ばす(第8章)。貫一はそのまま出奔する。 https://www.youtube.com/watch?v=Nt2yBCJdRAQ&t=30s 中編 4年後、新橋のステーションから、貫一の親友で卒業して法学士となった荒雄は愛知県参事官として赴任しようとしている。友人4人が見送りに来て話が盛り上がる。赤樫という60過ぎの高利貸しのところに借金のかたに奉公しているうちに手をつけられ妻にされ、いまはやり手となった「美人クリーム」とあだ名される美人高利貸し(満江)の話で盛り上がる(「高利貸し」(氷菓子)をもじったシャレ)。途中、荒雄は貫一を見かけたように思うのだが、すぐに姿はみえなくなる。 じつは、貫一は親友の旅立ちを見送りに来ていたのだが、気づかれまいと身を隠したである。貫一は鴫沢家を出てから、高利貸し鰐淵(わにぶち)の手代となって働いているのだった。赤樫満江はそんな貫一に独立を援助すると言う。わけは貫一にぞっこんだからというのである。宮に裏切られた貫一は女には興味がないと答える。 いまは、富山宮子となったお宮は、夫には愛情を持てず、産んだ子にすぐに死なれ虚しい生活を送っている。ある日、夫に連れられて田鶴見子爵邸を訪れる。子爵の双眼鏡というものをのぞかせてもらっている宮は、離れに貫一を見つける。じつは子爵は裏で高利貸しに資金援助をしており、そのため貫一が来ていたのである。すれ違いざまに二人は4年ぶりの再会をする。直後、写真撮影の途中で宮は気を失い倒れる。 他方、深夜、片側町の坂町の暗い道で、貫一は恨みをもつ2人組に襲われ、重症を負う。 後編 貫一の遭難は新聞に報道される。入院中の貫一を満江は頻繁に訪れている。そこへ貫一の育ての親ともいえる鴫沢隆三がやってくるが、貫一は顔を合わそうとはしない。 貫一の留守の間に、鰐淵の家に、鰐淵によって息子雅之が連帯保証人の公文書偽造の罪に落とし込められて刑務所にいれられた老女が、毎日のようにやって来て鰐淵の首を寄こせと言う。ある風の強い日、今日はあの気違いが来なかったと、安心して夫婦が寝込んだ夜に、老女の放火によって鰐淵の家は焼失し、夫婦は焼死する。 続金色夜叉 あいかわらず高利貸しをしている貫一は、義理ある人のために職を失い借金を背負った荒雄に会う。その後、荒雄が来たと言うので、迎えると、それは、久しぶりに会うお宮だった。お宮は自分の罪をわびるが貫一は許さない。お宮は貫一にすがりつく。そこに満江がやって来て、騒動となる。その夜、貫一は、お宮が自害して自分も死ぬ、夢をみて目が覚める。 続続金色夜叉 気分転換に那須に行った貫一はそこで借金のための心中しようとする男女を助ける。じつは、二人は、富山唯継に身請けされそうになった、お静と、それを救おうと大変な借金をせおってしまった狭山であった。貫一は二人の借財を代わりに払い、二人を引き取る。 新続金色夜叉 物語は、いきなり、お宮が貫一に宛てた候文の長い手紙の文章で始まる。お宮は後悔し許しを乞う。助けた男女を使用人にしている貫一は、お宮の手紙を読みながら思案に暮れる。さらにお宮の家人から手紙が来て、お宮は自責の念から死につつあるという(ここで作者尾崎紅葉の死により絶筆)。 金色夜叉 終篇 小栗風葉作 (1906年明治39年新潮社) 放火で死んだ鰐淵の息子直道と荒尾譲介の助言により、間貫一は高利貸しを辞める決意をする。一方、富山唯継は赤坂の10代の芸者を身請け新聞に報道される。富山との不仲と貫一への思いに、ついにお宮は発狂し、小石川脳病院に入院する。貫一の名だけをくり返し、自殺も試みるお宮を見た父隆三は、貫一にお宮に会ってもらうために、荒尾に間に立ってもらうよう頼み込む。富山唯継は宮のいなくなった本宅に身うけした芸者を入れ、ついに宮は離縁する。人妻に友を会わすわけにはいかないとしていた荒尾も、離縁したならばと、貫一にお宮に会うよう助言する。正気と狂気の間をさまようお宮は、一瞬正気にかえって貫一の名を呼び、貫一はお宮を許す。高利貸しで得た金で、貫一は荒尾の借金を返し、さらにフランスに洋行させる。さらに放火した老女の息子、飽浦雅之と、彼が公文書偽造罪で刑務所に入っていたために親がゆるさないために結婚できないお鈴、の二人を、荒尾と同じ船で中国に駆け落ちせてやる。また残りの金を、直道が属する地学会の奨学金基金にする。高利貸しの夫の死により解放された赤樫満江も荒尾の待つパリへと旅立つ。貫一はまだ正気にもどらぬお宮と思い出の熱海の地で二人きりで静かに暮らすのであった。 注 明治時代の1円はいまの2万円ぐらいか(http://manabow.com/zatsugaku/column06/ 2016年5月19日)
by takumi429
| 2016-05-19 07:35
| 社会学史
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