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フィルム・スタディーズ入門 4 物語構造(1)

映画のマクロな構造
(1)物語(narrative)‏
 物語の中身。映画だけでなくて、小説でも、マンガでも、アニメのかたちにしても表現できる。
(2)語り口(narration)‏
  どのように観客に提示するか。
   どの視点から語るか
   どんな順番にかたるか

物語(の中身の)構造
出来事が原因ー結果の論理で関係しあう
出来事の単なる時間的継起(ストーリー)
 A:王が死んだ。
 B:そしてそれから王妃が死んだ。
物語の本当の関連性(プロット)
 A:王が死んだ。
 B:そして王妃は悲しみのあまり死んだ。

動機づけ
原因ー結果という物語の論理は、登場人物の欲望と願望によって動機づけ展開されていく。
例:無実の罪に問われた主人公が自分の無実を証明しようと活動する。(ヒッチコックの映画のパターン)
 平和を復活させるべく悪役を主人公が打ち倒す。

物語の構造
冒頭部:発端となる均衡状態
中間部:均衡の崩壊(過渡期)
結末部:均衡の復元

例:『指輪物語』
平和な世界
悪の支配の広がり 指輪をめぐる闘争
平和な世界の復元

発端の均衡から均衡の復元に至る行程は、(たいていは主人公の成長・衰弱・死などの)変容をともなう。

そのほかの物語構造の要素
開示: 登場人物の背景と状況
障害: 登場人物の目的達成に立ちふさがる
伏線: 映画作品のずっと後で結論や解決を引き起こすもの
締め切り: 主人公た目的を達成するために与えられたタイム・リミット
つかみの台詞(せりふ):登場人物が何をするつもりかを言って、その通りに次のシーンでする。

マクガフィン
ヒッチコックの用語
観客にとってはそれほど意味のないものなのに、登場人物にとっては重要らしいもの。その機能は物語を進行させることでしかない。
例:「サイコ」の中のマリオンが盗んだ金、「汚名」のワイン瓶のなかのウラニウム。

物語のパターン

プロップの『物語の形態学』
ウラジーミル・プロップは、100篇のロシア魔法昔話を調べ上げた結果、これらすべての昔話が1つの共通の抽象的な筋の構造に還元できるという洞察に至った。
昔話の機能(関数)
皇帝が若者に鷲を与える。鷲は若者を他国へと連れて行く。
祖父が、スーチェンコに、馬を与える。馬はスーチェンコを他国に連れて行く。
呪術師が、イワンに、小舟を与える。小舟はイワンを他国に連れて行く。
登場人物やものは変数にすぎない。機能(関数)は同じ
f(A,B,C) = A → B , C+B→out
    C
「機能(関数)」:人物が異なっても同じことをしている
31の機能の連続から昔話は成り立っている
7つの行為項(31の機能をさらに抽象化したもの):
敵対者(危害を加える者)
贈与者(伝達者)
助力者
探されている人物とその父
派遣者
主人公
偽の主人公

昔話の円環的構造
(1)家郷からの出発
(2)異国での課題の遂行
(3)帰還


ジョセフ・キャンベルの神話学
「神話の中には、・・・神からの賜物やヴィジョンを求めて旅立つという型というものがあって、どの民族の神話でも形式は同じです。・・・自分の世界を後にして深淵に下っていく、あるいは遙かかなたへ、あるいは天の高みへと昇っていく。そしてそこで、自分がそれまでいた世界では意識できなかったものに出会う。そのあと、見出したものと共にそこに留まり、世界のことは放っておくか、それとも恩恵を携えて元の世界に戻り、社会の中でその恩恵を保持することにつとめるか、そういう二者択一を迫られる。」 (『神話の力』p.228)‏
「英雄は日常世界から危険を冒してまでも、人為の遠く及ばぬ超自然的領域におもむく。そのおもむいた領域で超人的な力に遭遇し、決定的な勝利を収める。英雄はかれにしたがう者に恩恵を授ける力をえて、この不思議な冒険から帰還する。」(『千の顔をもつ英雄』邦訳p.45)


スターウォーズ 
ジョージ・ルーカス(George Walton Lucas Jr)制作・監督、1977-2005年
キャンベルの『千の顔を持つ英雄』の影響を受けて、スペースオペラ(宇宙活劇)というSFのなかで神話を描いた。
ジョセフ キャンベル:
 「映画スターウォーズは神話における英雄伝説を完全に体現している」


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by takumi429 | 2008-05-01 21:34 | フィルム・スタディーズ入門
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