フィルム・スタディーズ入門 6 映画の語り口

6.映画の語り口 のまとめとして、オーソン・ウエルズの『市民ケーン』を上映した。

新聞王ハーストとその愛人・女優のマリオン・ディビスのゴシップを種にして映画を作りあげている。しかしそれを知らない現代に我々にとっても、斬新な映像と語り口と特殊効果が詰まった画期的映画であることがわかる。
ハーストの圧力におびえた映画館と映画スタジオのためにこの映画はヒットできなかった。

ニュースに主人公のことを語らせる
 大パニックを引き起こしたラジオ劇『火星人襲来』での手法を踏襲。
撮影構想 (撮影監督 グレッグ・トーランド)
・ディープ・フォーカス 被写界深度を深くとること(ピントが手前から奥までずっと合っていること)
・長まわし
・慣例どおりにシーンをカットに割ることの排除。そのために、シーンをキャメラからみて複数の距離平面に分割することや、キャメラを動かすことなどの技法も使わない。
・キャメラ移動の大がかりな振り付け。
・コントラストの強い画面をつくる証明
・一部のシーンではいわゆるUFA(Universum-Film-Aktiengesselschaft1917年に設立されたドイツ最大の(独占的)映画会社、第二次世界大戦後解体、のち部門別に復活)スタイルの強烈な表現効果をつかうこと。
・ローアングルのキャメラ位置、そのためにモスリン布の天井つきセット。
・強烈な視覚効果を多用すること―――たとえば複合ディソルヴ(dissolve:ある場面から次の場面へ重なりながら映像が転換する)、極端に被写界深度の深い画面効果・光源に直接カメラをむけること、など。
ほとんどすべてが、当時の大手スタジオ調の撮影狩猟に反旗を翻すものだった。
(Carringer1985 邦訳118頁)。

ひとりの男の人生が複数の語りによって描かれる
→黒沢明『羅生門』:一つの事件がさまざまな人間の語り口で語られる「羅生門的現実」
プロット(映画での語られ方)とストーリー(語られる元のお話)

語り口(plot)
C.クレジットタイトル(製作者名や配役などの字幕)
1.ザナドウ:ケーンの死
2.撮影室:
a.ニュース映画
b.「バラのつぼみ」をめぐる記者の会話
3.ナイトクラブ:トンプソンのスーザン取材
4.サッチャーの図書室:
a.トンプソンが入りサッチャーの草稿を読む
(第1のフラッシュバック[回想シーン])
b.ケーンの母が少年をサッチャーの元へと手放す
c.ケーンは成長し新聞社を買い取る
d.ケーンは新聞社を拡大する
e.ケーンは新聞社を手放す
(第1のフラッシュバック終わり)
f.トンプソンは図書室を出る。
5.バーンシュタインの事務室:
a.トンプソンはバーンシュタインを訪れる。
(第2のフラッシュバック)
b.ケーンは新聞社を買い取る。
c.モンタージュ:新聞社の発展
d.パーティ
e.ケーンの渡欧についての会話
f.ケーンがフィアンセ、エミィをつれて帰国
(第2のフラッシュバック終わり)
g.バーンシュタインは回想を終える。
6.養護ホーム:
a.トンプソンはルーランドと話す
(第3のフラッシュバック)
b.朝食のモンタージュ:ケーンの結婚生活の悪化
(第3のフラッシュバック中断)
c.ルーランドは回想を続ける。
(第3のフラッシュバック再開)
d.ケーンはスーザンと会い、彼女の部屋に行く
e.ケーンの政治キャンペーンのクライマックス
f.ケーン、ゲッティス、エミィ、スーザンの対面。
g.ケーンは選挙にやぶれルーランドは転勤したいと申し出る。
h.ケーン、スーザンと結婚。
i.スーザンのオペラ初日
j.酔ったルーランドの代わりにケーンがルーランドの劇評を書き上げる。
(第3のフラッシュバック終わり)
k.ルーランド、回想を終える。
7.ナイトクラブ:
a.トンプソンはスーザンと話す。
(第4のフラッシュバック)
b.スーザンの歌のリハーサル
c.スーザンのオペラの初日
d.ケーンはスーザンが歌い続けることを強要する。
e.モンタージュ:スーザンのオペラの経歴
f.スーザンの自殺未遂、ケーンはスーザンが歌を辞めることを許す。
g.ザナドウ:退屈するスーザン
h.モンタージュ:ジグソーパズルをするスーザン
i.ザナドゥ:ケーンはピクニックを提案する。
j.ピクニック:ケーンはスーザンを平手打ちする。
k.ザナドゥ:スーザンはケーンのもとを去る。
(第5のフラッシュバック終わり)
l.スーザン、回想を終える。

8.ザナドゥ:
a.トンプソン、レイモンドと話す。
(第5のフラッシュバック)
b.ケーンはスーザンの部屋をめちゃめちゃにして紙押さえを取り、「バラのつぼみ」とつぶやく。
(第5のフラッシュバック終わり)
c.レイモンドは回想を終え、トンプソンは他の記者と話し、全員が去る。
d.カメラはケーンの持ち物を次々と写し、雪車の名前を写し出し、さらに門、城を写し、終わる。
E.エンド・クレジット
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by takumi429 | 2008-05-22 15:55 | フィルム・スタディーズ入門 | Comments(0)
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