意味を求める人間 ハイデッガー『存在と時間』 ←第一次大戦参戦し戦士した仲間の体験 「ある」ということ(存在)をなんとなくわかった気になっている 「世人」(das Man)(だれでもないふつうの人)への頽落 死に直面したとき、世人から自分自身にもどる のっぺらぼうな時間や空間は、死へと集約されそこから再構成される 12時前の15分=12時あとの15分 のっぺらぼうの時間 (死確定の塹壕からの)突撃(12時)まであと15分! ありふれた風景→死の直前に見るかけがえのない風景 ありふれた存在→かけがえのない存在として現れる:存在への覚醒 フランクルの実存分析 『夜と霧』(1947) アウシュビッツ強制収容所での体験の記録 日常の世界が崩壊したとき、自然の美があらわになる ある夕べ、私達が労働で死ぬほど疲れて、スープの椀を手に居住棟のむき出しの土の上の床にへたりこんでいたときに、突然、仲間が飛び込んで、疲れていようが寒かろうが、とにかく点呼場に出てこい、と急き立てた。太陽が沈んでいくさまを見逃せまいという、ただそれだけのために。 そしてわたしたちは、暗く燃あがる雲に覆われた西の空を眺め、地平線いっぱいに、鉄(くろがね)色から血のように輝く赤まで、この世のものとは思えない色合いでたえずさまざまに幻想的な形を変えていく雲をながめた。その下には、それとは対照的に、収容所の殺伐(さつばつ)とした灰色の棟の群れとぬかるんだ点呼場が広がり、水たまりは燃えるような天空を映(うつ)していた。 わたしたちは数分間、言葉もなく心を奪われていたが、だれかが言った。 「世界はどうしてこんなに美しいんだ!」 意味を求める人間存在(実存) あなたは壕の中で作業をしている。灰色の夜明けが辺りを包む。頭上の空はいちめん灰色だ。どんよりとした薄明に、雪も灰色だ。あなたの仲間がみにまとうぼろぼろの衣服も灰色だ。その顔も灰色だ。 あなたはまたしても、愛する妻と語らい始める。あるいは何千回めかに、天に向かって嘆き、問い詰める。何千回目かに、なんとか答えを得ようと煩悶する。わたしのこのくるしみにはどんな意味があるのだ、この犠牲にこうしてじわじわと死んでいくことに、どんな意味があるのだ。 目前にある惨めな死に最後の抵抗をこころみるうち、あなたは、いちめん灰色の世界を魂が突き破るのを感じる。最後の抵抗のうちに、魂がこの惨めで無意味な世界のすべてを声、究極の意味を問うあなたの究極の問いかけにたいし、ついにいずこからか、勝ち誇った「しかり!」の歓喜の声が近づいてくる。 その瞬間、あけゆくバイエルン地方の朝の陰惨たる灰色一色のただなかに、地平線上にあたかも舞台の書割のように浮き上がる、遠い農家の窓に明かりがともる。 光は暗黒に照る……。 ヴィクトール・E・フランクル. 夜と霧 新版 (Kindle の位置No.1023-1027). 株式会社 みすず書房. Kindle 版. 人間は意味をもとめる動物である 人間は過酷な状況に苦しむだけでなく、 その状況の意味の欠如に苦しむ ロゴテラピー 患者が人生に意味を見いだせないとき神経症となる その意味を見いだせるよう援助する トレベルビーの看護論 病いに否定的な意味、あるいは意味の欠如しか見いだせない患者に 積極的な意味を見いだせるよう、共感と同情をもって援助する 病者の意味世界 ケース:1杯のコーヒー 115頁 多くの末期がんの患者様にとって、夜はこのうえもなく恐ろしい。「寝ている間に死んでしまうかもしれない」と感じておられるのかもしれない。 ・・・(中略)・・・ Bさんは腫傷と腹水の貯留のために臥床(がしょう)することができず、夜間も座って過ごされていた。夜になると決まって2〜3回、コーヒーが飲みたいと私たち看護師をコールされた。「すぐにコーヒーを入れて差し上げられないことがある」「お待たせするのはどうか」という意見が多くの看護スタッフからあり、Bさんと相談して魔法瓶にあらかじめコーヒーを入れておくことになった。しかし、本当にBさんはそれでよかったのだろうか? もし、・・・起きて朝が来るのを待ちたかったのだとしたら? Bさんは“恐るしい夜”をコーヒーと一緒に私たちとの心の触れ合いを味わう“ホットな夜”にリフレーミング※1することで、夜をやり過ごしたかったとしたら?一残念だが、今となってはBさんに確かめることはできない。…(以下略) *リフレーミング(reframing):ある枠組み(フレーム)でとらえられたいる物事の枠組みをはずして、ちがう枠組みで見直すこと。 意味を与えるもの=物語 ケース 125頁 子育ての意味は?と聞かれたシングル・マザーたち ①子どもの父親との出会い ②子どもの父親との別れ ③子どもの出産 ④自分の母親との関係 のストーリーを語りだす。
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by takumi429
| 2021-05-31 20:50
ストレスとコーピング理論 関心がもたらす心の地図のあり様 ケアの優先 ベナー看護理論 ストレス(by セリエ) 脅威(ストレッサー)に対する生体の共通した応答反応 ストレス症候群の変化 ①警告反応期 ②抵抗期 ③疲弊(ひへい)期 平均ストレス表 配偶者の死 100 離婚 73 失業(解雇)47 結婚 50 ラザルスのストレス心理学 脅威(ストレッサー)をどう評価するかによってストレスは異なる ストレスの対処(コーピング)の2種類 (a)問題解決に焦点をあてた対処 (b)感情に焦点をあてた対処 ラザルス 「ストレスの現象学」を提唱 (脅威となりうる)出来事が「心の地図」のなかでどのように現れるのか 現象学(内観心理学の復権) 心の中の地図 例:神戸女学院(≒南山大学+金城大学)出身の嫁、 大垣から逃げ出し阪南市に住む 嫁の「心の中の地図」:阪南市は関西圏の内、大垣は地平線の向こう 現象学 byフッサール ものごとが心の地図の中でどのように現れるか、を探る あたりまえの「客観的現実」を括弧に入れる(疑う) ←第一次世界大戦のよる現実崩壊 ハイデッガー『存在と時間』 ←第一次大戦参戦し戦士した仲間の体験 「ある」ということ(存在)をなんとなくわかった気になっている 「世人」(das Man)(だれでもないふつうの人)への頽落 ハイデガー『存在と時間』 関心が「心の地図」での物事の有り様をきめる 人はなぜしばしばカサ☂を忘れるのか ①降り続く雨→関心:降られたくない・濡れたくない カサの存在に気づく ②雨が止んだ→関心:濡れる心配はない 別のことへ カサの存在に気が付かない カサの存在は消えた。 関心によって存在は有ったり消えたりする。 気づかい(関心)による心の地図(意味の世界) ピアニスト 腱鞘炎=音楽家としての人生とその世界の崩壊 一般人 腱鞘炎=ちょっとした障害 ベナー看護論 病いはしばしば患者の意味の世界の崩壊をもたらす 患者は治癒だけでなく意味の世界の再建を必要とする 看護は患者の意味世界の再建を援助する
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by takumi429
| 2021-05-24 17:20
人工知能論とベナー看護理論 人工知能(AI)の3つのブーム 第1次AIブーム(1950年代~1960年代) 1956年夏 ダートマス会議 「人工知能」:機械に人間の知的能力を模倣(シュミレーション)させる 計算を効率化させる理論の不足とコンピューターの処理能力の不足によりすぼむ。 第2次AIブーム(1980年代~1990年代) エキスパート・システム スタンフォード大学のファイゲンバウムら エキスパートの診断の仕方をコンピューターに移す。 「もし✕✕✕なら、△△△せよ。そうでなければ○○○せよ」 といったルール群で構成された人工知能。 たとえば、 質問:主な症状は次のどれですか? 回答:1:熱がある 2:鼻水が出る 3:咳が出る とした場合、以下のような判断をあらかじめ用意する。 ルール1:もし熱があるなら、食中毒だと診断する。 ルール2:もし鼻水が出るなら、風邪だと診断する。 ルール3:もし席が出るなら、結核だと診断する。 クライエントが「回答2:鼻水が出る」を選択したら、ルール2が該当するから「ただの風邪です」という診断が下される。 みずからは学習をおこなわない。エキスパートの知識による診断を再現するだけ 第3次AIブーム(2000年代~) 脳の神経系を数理的にコンピューターで再現 みずから学習するコンピューターの出現(機械学習) ヨビノリ 機械学習 https://www.youtube.com/watch?v=s5_Pk3CjhNA&feature=youtu.be ヨビノリ 教師あり学習と教師なし学習 https://www.youtube.com/watch?v=U8uqieKYtY4&feature=youtu.be ベナー看護理論が影響を受けているのは、 第2次AIブーム、とくにエキスパート・システムに対する ドレイファス兄弟の反人工知能論 ドレイファス兄弟の「技術習得モデル」 ①初心者 状況を見ずに規則通りにふるまう ②上達した初心者 状況依存の要素にきづく ③上級者 目的をもって臨機応変にふるまう ④熟練者 過去の記憶と比較しつつ状況を把握する ⑤エキスパート 技術は体の一部となって意識にのぼらなくなる AIはせいぜい③にしかたどりつかない、とドレイファス兄弟は主張。 看護においてこの理論の検証を依頼→ベナー看護理論 ベナーの提唱する看護のおける技術習得モデル ①初心者 状況と関係なくバイタルサインのデータだけに注目して原則論をふりまわされる ②上達した初心者 くりかえし起こる意味ある状況に気づく ③上級者 看護計画を立てて看護できる ④熟練者 状況を全体的にとらえ「格律」(maxim)よって看護する maxim (格律・金言・格言) 熟練した者だけが使い理解できる言い回し 例:ボールは上からたたけ(野球) 鉗子はすこし上から滑らすように差し入れろ(日野原←ベテラン看護師) ⑤エキスパート 状況を直感的に把握し問題を正確につかむ 1.ノンバーバルコミュニケーション 言葉によらない情報伝達 1)周辺言語 話す抑揚、調子、語尾 節酒の指導する医師の話しぶりによって患者のコンプライアンスがちがう 2)ボディ・ランゲージ 意思を伝達するための身ぶりと手ぶりなどの体の動き a.目 視線と目つき b.動作 c.身体接触 例 アンナおばちゃん 教科書pp.164-5 赤ん坊の突然の呼吸停止 メキシコ人家庭では少ない d.対人距離 3)あらゆるものが意味をもちうる 車のクラクション、点滴の色、個室への移動、早くない駆け足 足浴:「いっらっしゃい、よく来てくださいました」→良好なコミュニケーション #
by takumi429
| 2021-05-17 17:14
4.家族療法から物語療法へ 家族療法 家族をシステムとみなす 家族間のコミュニケーションの悪循環をみつける(誰が悪いと決めつけない) ケース 主婦A(43歳)は、神経性の下痢で入院していた。ほぼ治癒して退院したのだが、家に戻るとまた再発してしまった。Aさんの病状はAさんだけも問題ではないと感じた看護師たちは、Aさんの家族を呼んで話を聞いてみた。 面接の場で、Aさんの夫は家族に背を向けて座り、もっぱらAさんに向かってだけ断定的な口調で話をしていた。それに対して、子どもたちももっぱらAさんにうったえるかたちで話をしていた。 Aさんが、親同士のコミュニケーションと子どもたちのコミュニケーションの間にあってちょうど両者から圧力をうけるかたちになっているのがみてとれた。 家族療法 病んでいるのはシステムとしての家族 それが家族の一人に顕在化しただけ 直線的因果論から円環的因果論へ 犯人探しの介入をしない 家族看護学:患者を含む家族全体を看護の対象とみなす ベイトソンの理論(→家族療法) 家族はサイバネティクス的なシステムである ベイトソン理論理解のために 1)うそつきのパラドクスの階層化による解決 2)暴走するエアコン 3)ダブルバインド論 嘘つきのパラドクス 「私の言うことはウソだ」 階層化による解決 「私の言うことはうそだ」←これだけはうそではない 統合失調性患者はこの階層化できない 冗談が通じない エアコンの暴走 「冷房と暖房を両方かける」 人間はものごとから「物語」を作り、その物語の流れの中で、ものごとの「意味」を与える。自分の物語の中での自分を「物語的自己」という。 例:看護師をめざして日々努力する私 「物語」はしばしば外から与えられ、本人を支配する:支配的物語 例: 物語:赤い糸で結ばれた王子さまと結婚して幸せに暮す「私」 現実:ソファーに転がりながらビールを飲みながら中日巨人戦を観るデブの男に給仕する「私」 物語療法(心理療法の1つ) 支配的物語が本人を苦しめている時、その物語からクライエントを開放し、みずから自分に合った物語を創造できるよう手助けする。別の物語を押しつけてはいけない。 新しい物語形成の種はそれまでの物語に収まらない「ユニークな結果」:新しい物語の創出の種となる。 認知言語学(レイコフ)におけるメタファー論 メタファーとは写像である。 写像(矢印→を扱う数学を圏論とよぶ) メタファー表現「あの男は私を汚れたゾウキンみたいに捨てたの」 ゾウキンをめぐる話を使って自分の状況をとらえる(概念する)。 写像関係 ゾウキン→私 汚れた →もう若くない 捨てる →別離 メタファー表現:「恋は旅」 旅を通じて二人の恋の過程を理解把握する。 同乗者→君と僕 道のり→恋愛の過程 分かれ道→別離 バウムテストも箱庭療法も写像 #
by takumi429
| 2021-05-12 15:25
文化人類学とレイニンガー看護理論 西洋によるアメリカ・アジア・アフリカの侵略・征服 さまざまな民族について学問(民族学) 文化人類学:文化の比較考察から人類を考察する 安楽椅子の文化人類学 フィレイザー『金枝篇』 現地調査(フィールドワーク)の人類学 トロブリアンド諸島に閉じ込められたマリノフスキー 文化の内側からの理解 外側からの理解(エティックな見方):裸踊り 文化の内側からの理解(イーミックな見方):雨乞いの踊り 大文字焼き よそ者の見かた「大文字焼き」 山を焼いて火で文字を書く 京都の人の見かた:「五山の送り火」 お盆に帰ってきた霊魂をあの世に送る←霊魂(祟り)への恐怖 文化人類学(出来事をその文化の内側から理解する) 医療人類学(病気をその文化の内側から理解する) 疾患disease 外側(西洋医学)からの診断:上気道感染/グリッペ 病因:雑菌感染/インフルエンザ感染 対処:口腔殺菌/対症療法・抗インフルエンザ薬投与 病いillness 内側(日本文化)からの名称 「風邪」 病因:邪悪な空気に触れた 対処:暖かくする・体に何か入れる(注射・卵酒・ドリンク) 説明モデル どんな病気か、なぜその病気にかかったのか、どうしたら治るのか、についての患者が抱いている考え 病院にまで来るからには、患者は患者なりの病気についてのイメージ(説明モデル)が存在する。 「無意味な素人考え」として頭ごなしにただ否定すると、患者はもう来院しなくなる、 あるいは言うことを聞かなくなくなる(ノン・コンプライエンス) 説明モデルを知るための質問(クラインマン) 1)あなたは病気(症状)の原因は何だと思っていますか。 2)症状が現れた日時について、その時に現れた特別の理由が思い当たりますか。 3)その病気(症状)は、あなた自身にとってどのような影響をもたらすと思いますか。それはどういうふうに起こると思いますか。 4)病状はどのくらい重いと考えていますか。そして、治るまでどのくらいの期間がかかると思いますか。 5)どのような治療を受けるべきだと考えていますか。 6)治療で得られる効果のうち、あなたにとって何がもっとも大切ですか。 7)この病気によって引き起こされた最大の問題は何ですか。 8)この病気について、あなたは何をもっとも恐れていますか。 身体化(東アジアの医療文化の一つ) 精神的問題が身体に現れる 肩こり 心的なストレス→肩が凝る 登校したくない子どもの腹痛 レイニンガー看護理論 医療人類学;人はその固有の文化のなかで病む ならば看護にもその文化にふさわしいケアがあるはず→文化ケア
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by takumi429
| 2021-05-11 01:18
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全体 プロフィール 看護に学ぶ臨床社会学 社会環境論 メディア環境論 ヴェーバー宗教社会学講義 映画論 マンガ論 アニメ論 フィルム・スタディーズ入門 映画史講義 ヴェーバー研究 メディア社会学 ゾラ講義 社会システム論 メディア論 フェミニズム思想入門 田山花袋研究 ベンヤミン 物語論 都市の社会学 パリ ナラティヴ 近代とは何だろうか 社会学史 社会学入門 論文の書き方 看護理論 健康心理学 看護社会学 教科書・参考書 以前の記事
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